かけらことばのおんなのこ
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途端に女子たちが俺に向かってずんずんと歩いてくる。
「ちょっと西間」
なんか怖い。何事?
「えっと……なに?」
俺がやや引け腰で言うと、女子の一人が俺の机に何かをばんっと叩き付けた。
「え、何これ」
「見りゃ分かるでしょ。どうするのよ、これ」
言われるがままに女子が置いたブツを見て、それはプリクラだったのだが、
「うへえ……有田、化粧濃い……」
「そっちに目がいくか普通! しかもこれ美白モードだし、最近は目を自動認識して強調してくれるの! あいつはすっぴんだよ」
「そうなの? 俺、プリクラは正式名称がプリント倶楽部だっていうことしか知らなかった」
「え、そうなんだ……じゃなくて!」
ださい正式名称にそれなりにショックを受けたらしい女子は、一瞬面食らった表情をしたが、すぐに気を取り直した。
何か見落としたかなあと思って、もう一度プリクラをよく見てみる。
しかし装飾が多いなあ……目がチカチカするし……っていうか、男の目まで認識して強調しちゃうの? うわ、それ変だって。気持ち悪い――男?
有田の横には見知らぬ男が一緒に写っていた。
見た目から言って、二十代前半くらいか。
「誰これ? うちの学校の奴じゃないよな?」
「やっと気づいた? 蘭奈、この人と一緒にショッピングして、プリクラとって、食事したんだってよ。しかも二人で」
「二人で……」
勘の悪い俺でも、ここまでくれば彼女の言いたいことは分かった。
つまり、これは――、
「あんたたち、別れてないんでしょ?」
「……一応な」
「あーあ。もっと大事にしてあげないから。この人格好いい上に、優しくて気が利いて、文句ない人らしいよ」
「……」
プリクラを眺めながら、俺は何を言うべきか悩み、
「あーっ! それ西間には見せるなって言ったのに!」