かけらことばのおんなのこ
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「うわっ、眩しい!」
さほど明るくはないのに、この店の薄暗さに目が慣れていたせいか、やたらと眩しく感じた。
目が慣れるのを待って光源を見てみると、それは勉強机によく付いているような電気スタンドだった。
「え…何これ」
「明かり」
「……、何の、ために?」
「けーた、勉強したい。ここ、暗い。明かり、いる。違う?」
「……」
「明かり、持ってきた。けーた、勉強できる。違う?」
「…そう、だけど」
途切れ途切れながら肯定した俺を見て、想は何だか満足そうに笑うと、
「ごゆっくり」
そう言い残して、レジの奥へと戻っていった。
「……」
想って、意外と気が利くんだな。
「んじゃ、ま!遠慮なく使わせていただきましょうかねっと」
一気に機嫌がよくなった俺は、今日想の店に行こうと思った自分を内心で激しく讃えながら、勉強に取りかかることにした。
「なるしすと」
「なっ!そういうこと言うなよ!っていうか心を読むなよ」
「へへへ」
照れたような想のおどけた口調。
そんな反応をするとは思わなかった俺は、少しばかりびっくりした。
「お前…、意外とユーモラスだな。そういうこと言うんだ」
「前、言った。私、感情ある。笑える。冗談、言える」
「…そうだな。人間だもんな」
「うん」
俺は一人、満足そうに頷いて、再び勉強に戻った。
それきり想は話しかけてこないと思ったが、俺の予想は外れた。
「……魔女っ子」
「…え?」
「けーたのお母さん、昔、魔女っ子役、やった?」
俺は宙を仰いで、記憶を探す。