かけらことばのおんなのこ

□3
2ページ/14ページ

 俺は目の前でにやにやしている四人に顔をしかめ、有田を盗み見た。
 有田も変な顔をしていた。

「えぇと…俺、一応客なんだけど。なにその対応」

 俺ってばいきなりけんか腰。
 四人がそろって黙り込んだ。

 俺がけんか腰になっているのには理由がある。

 四人のうち、女二人。
 見たところ同世代の二人は、金髪にパーマ、厚化粧にエクステ、ネイルアートに崩れすぎな服装…とどこをとっても俺の苦手な『ギャル路線』まっしぐらな女子だったからだ。

 全く、あんなに厚化粧じゃ、同じ顔に見えるぜ。

「あいあーい。失礼しましたー」

「客なんか来たことないから対応忘れちゃってさ。悪気はないんだよ。許してくれる?」

 俺も有田も黙っていると、男二人の方が口を開いた。

 こっちはたぶん中学生くらい。
 弾けた感じはなく、落ちついていた。

「…悪気ない割りに、返事が『あいあーい』ってなんだよ」

 有田がここでようやく口を開いた。
 いやいや、あんたに口の利き方言われたくないって。

「ああ、ごめんごめん。そういう言い方が板についちゃってるからさ。ごめんなさい」

 男子の片方がそう言った。

「……まあ、よし」

「いや…有田、上から目線はおかしいだろ」

 俺が突っ込むが、有田は無視。
 それどころか少し驚いた顔をして、男子二人を凝視している。

「有田?」

「あ、あんたら二人……そっくり。――双子?」

 男子二人は一度目を合わせて、有田に向き直った。

「よく分かったね、有田さん。――僕は双子の兄、壹(イチ)。14歳」

「僕は弟、映(エイ)。やっぱり14歳。よろしくねっ」

「ついでに言っておくと、ここの派手ちゃん二人も双子だよ」

「派手ちゃん二人はお客なんだよ」

 派手ちゃん呼ばわりされた女子二人は、ひどーいとか何とか言いながら振り向いて、

「初めましてー。アタシは姉の桃花(モモカ)でーす」

「アタシは妹の椎菜(シイナ)。ともに17歳でーす」

 マスカラで強調しすぎの目を細めて笑った。
 あら、似てるのは厚化粧のせいじゃなかったんだ。

 そしてそれを受けて、俺は有田に耳打ち。

「俺…、この曜日苦手かもしれない」

「……他の曜日知らんが、あんたがそう言うなら私も向かなそうだわ」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ