かけらことばのおんなのこ
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俺は目の前でにやにやしている四人に顔をしかめ、有田を盗み見た。
有田も変な顔をしていた。
「えぇと…俺、一応客なんだけど。なにその対応」
俺ってばいきなりけんか腰。
四人がそろって黙り込んだ。
俺がけんか腰になっているのには理由がある。
四人のうち、女二人。
見たところ同世代の二人は、金髪にパーマ、厚化粧にエクステ、ネイルアートに崩れすぎな服装…とどこをとっても俺の苦手な『ギャル路線』まっしぐらな女子だったからだ。
全く、あんなに厚化粧じゃ、同じ顔に見えるぜ。
「あいあーい。失礼しましたー」
「客なんか来たことないから対応忘れちゃってさ。悪気はないんだよ。許してくれる?」
俺も有田も黙っていると、男二人の方が口を開いた。
こっちはたぶん中学生くらい。
弾けた感じはなく、落ちついていた。
「…悪気ない割りに、返事が『あいあーい』ってなんだよ」
有田がここでようやく口を開いた。
いやいや、あんたに口の利き方言われたくないって。
「ああ、ごめんごめん。そういう言い方が板についちゃってるからさ。ごめんなさい」
男子の片方がそう言った。
「……まあ、よし」
「いや…有田、上から目線はおかしいだろ」
俺が突っ込むが、有田は無視。
それどころか少し驚いた顔をして、男子二人を凝視している。
「有田?」
「あ、あんたら二人……そっくり。――双子?」
男子二人は一度目を合わせて、有田に向き直った。
「よく分かったね、有田さん。――僕は双子の兄、壹(イチ)。14歳」
「僕は弟、映(エイ)。やっぱり14歳。よろしくねっ」
「ついでに言っておくと、ここの派手ちゃん二人も双子だよ」
「派手ちゃん二人はお客なんだよ」
派手ちゃん呼ばわりされた女子二人は、ひどーいとか何とか言いながら振り向いて、
「初めましてー。アタシは姉の桃花(モモカ)でーす」
「アタシは妹の椎菜(シイナ)。ともに17歳でーす」
マスカラで強調しすぎの目を細めて笑った。
あら、似てるのは厚化粧のせいじゃなかったんだ。
そしてそれを受けて、俺は有田に耳打ち。
「俺…、この曜日苦手かもしれない」
「……他の曜日知らんが、あんたがそう言うなら私も向かなそうだわ」