かけらことばのおんなのこ
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「やめろ気持ち悪い」
マークはひらひらと手を振って、奥に行った。
今日は土曜日。
マークが経営するファストフード店『Freedom!!』の日である。
俺はそこに文字通り“八つ当たり”に来ていた。
手当り次第に注文して、ひたすら胃に流し込む、いわゆる“やけ食い”という手段でもって。
ちなみにこのために今日は朝から何も食べていない。
今はハンバーガー二つとポテトを平らげ、もう一つ追加したポテトを待ちがてら二杯目のコーラを飲んでいる。
「流石に腹一杯だな。あとプリンでも食って終わりにするか」
「まだ食べるのかヨ」
「おうよ。やけ食いしに来たんだぜ。吐くほど食ってなんぼだぜ」
「吐かれたらまじで営業妨害だけどナ」
「気にしない気にしない。金は払ったぞ」
「食材費も徴収するぞコノヤロウ」
「いやどうせ想持ちだろ」
「何故分かった! おぬし、やるな!」
「相変わらず日本語うまいな、急に」
「な、ナナナニを言っているんダイ、ミスターニシマ。ワターシ日本語ワカラナーイ」
「……あっそ。どうでもいいからポテト持ってこいよ、ポテト」
「マークとポテトと、どっちが大事だっていうの!」
「間違える余地もなくポテトだ。早くしやがれ」
「へいへい」
「はいは一回」
「……イエッサー」
「……」
のれんを持ち上げて奥に消えていくマークを見送ってから、ふと思い立って、壁に貼りつけられたレコードを一枚ずつ見ていった。
「本当に色々あるな。概して古いけど」
独りごちながら立ち上がって、一枚のレコードを取り出した。
蓄音機にセットして、小さめの音量で再生する。
店内に、いかにも古めかしい雑音混じりの音楽が響きだした。
蓄音機の前に椅子を引いてきて背もたれが前にくるようにして座り、目を閉じてその音に聞き入る。
「またこのバンドかヨ。好きだナ」