かけらことばのおんなのこ
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「ん?」
ふと肩を叩かれて振り返ると、涼太が目の前に立っていた。
「なんだ? お前んちはあっちだろ」
「そうなんだけど、これ渡そうと思ってたの忘れてた」
「ん? なに?」
涼太が差し出してきたものを受け取って、何気なく目をやると、
「あ……」
それは例の“プリクラ”だった。
「へへっ、大したもんだろ。隙を見てさっと、な」
「お前……それは駄目だろ、この泥棒」
「この際だ、気にするな。これ持っていって洗いざらい喋ってもらえよ。たとえ真実が何だって、お前はそれを知る権利があると思うぜ」
「……ああ、分かった。サンキューな、涼太」
「いいってことよ! じゃあ、今度こそ帰るな」
小さくなっていく涼太の姿をしばらく目で追ってから、オレは手の中のプリクラに目を落とした。
派手な装飾に囲まれて二人の人間が仲良く写っている。
楽しそうな様子で、端から見れば幸せなカップルにしか見えない。
――カップルにしか見えない。
「はあ……、何なんだよ。あいつ」
そんなにその男といて楽しいなら、そいつと付き合えばいいのに。
さっさと俺を振ればいいのに。
なんで俺に隠してんだろ。
「あーもう、イライラする! 八つ当たりがしたい!」
物騒な独り言を呟いて、俺は帰路についた。
「――という訳だ」
「“という訳だ”じゃネーヨ! その流れだとオレに八つ当たりしに来たみたいだゾ!」
「その通りだ。飲み込み早いな、マーク」
俺の落ち着き払った言葉に、マークはやれやれと言って呆れた。
「営業妨害とは不良だナ、ケータ。見損なったゾ」
「どこが妨害だ。その逆だ。――おい、ポテトの追加まだ来てないぞ」
「ハイハーイ。今すぐー」