お題小説
□華やかなあの子
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画面は華やかなアニメーションと、その中ではにかむ一人の少女を映し出す。
明るい茶色のウェーブがかった髪をサイドでポニーテールした、丸くて大きな目が印象的な少女。
今人気絶頂にして、まつりと同時期にデビューしたアイドル、それが虹原ソラだった。
今時珍しい容姿端麗なのに歌唱力もあり、ダンスもトークも演技も何でもこなすスーパーアイドル。
何より彼女には“華”がある。
つまり、まつりとは正反対。
羨ましい気持ちもあったが、どちらかというと妬みや恨みが勝った。
だって、もし彼女がデビューしていなかったら、自分が今こうだったかもしれない。
デビュー当時は、人気を二分していたんだから。一瞬だったけど。
そんな事を思いながらぼんやりしていると、コマーシャルが終わって、夕方のニュースが始まった。
アナウンサーがお辞儀をして、今日のニュースをお伝えします、と言ったその直後。
「んーやっぱりあたしって可愛いわー。何ていうかこう、華があるのよね、華が」
まつりのすぐ後ろで、そんな声が聞こえた。
必然的に彼女の肩の筋肉は収縮し、彼女の心臓はどきっと音を立てる。
後ろを振り向きたい衝動と、そのままやり過ごしたい衝動が半分くらいずつ混ざり合って、まつりの背筋を嫌な汗が流れる。
まつりは意を決して、後ろを振り向いた。
「…あ、……れ?」
何もない。
気のせいか。
まつりがそう思って安堵の息を吐いた時、
「こっちよー」
彼女の真後ろで声がした。
反射的に振り返って、間近で自分を見る少女が視界に入る。
「はろーっ」
「――っきゃあああああああっ!」
まつりは叫んで、後ろにひっくり返り、そのまま失神した。
「え、ちょっと?ちょっとお?」
まつりを覗き込んでいた少女が、慌てて彼女を揺さぶった。
『――次のニュースです。人気アイドル、虹原ソラが今朝、自宅で意識不明の状態で発見され、病院に搬送されましたが、意識は依然として戻らず――』