お題小説
□伝説
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その昔、ハイビス・ポルホーナという女王がいました。
その女王が治めている国は長く平和で、人々は幸せに暮らしていました。
しかし、女王はやがて病気で床に伏し、亡くなってしまいます。
そしてその後を、ハイビスの息子、クアル・ポルホーナが継ぎました。
クアルが王位について三年。
隣国の怪物族たちが、領土拡大のために宣戦布告をしてきました。
クアルはまず、従者たちを呼び集め、打開策を練った。
母の遺志をしっかり受け継いだクアルは、ゆえに国民を恐怖へ陥れる戦争をしたくなかったのだ。
「従者たち、何か良い案はないか?何でも良い」
決して威張らないこの王に、従者たちは日ごろから敬意を払っており、このときも何か良い案はないかと皆必死に考えた。
すると、一人の従者が王の前に進み出た。
「王、旅人の知恵を借りてはいかがでしょうか」
「…その旅人とは?」
「かつて大戦争があったときに、軍に属せず、被害を最小限にとどめ、相手国の王を無条件降伏させた伝説の旅人――ピーター・ロジャンスです」
従者たちの間に、ざわめきが起こった。
その名はあまりにも有名で、かつ恐れ多い。
「……名案だ。早速その旅人を探し、ここへ呼び寄せてくれ」
クアルの言葉に、従者たちは一斉に敬礼をした。
さほど時も経たずに、ピーターは王の前に姿を現した。
くたびれた黄土色のローブをまとい、背中に大きな鈍色の剣を携えている。
「主が、かの偉大な旅人、ピーター・ロジャンスか?」
「…偉大などとは、滅相もない。僕はただの放浪者です。旅人なんて大層なものでもない」
「そのようなことは決してない。主の噂は予てより聞いている。その行為は誇れることだ。自身を持つと良い」
「ありがたきお言葉」
「そこでなのだが、是非、主のその力を我々にも貸していただきたい」
「…聞きましょう」
クアルはその旅人に、事の次第をすべて話した。
ピーターは無言でそれを聞き、話が終わると、その視線をしばらく宙に漂わせ、
「わかりました。尽力しましょう」
クアルのそれに合わせると、しっかりと頷いた。
「よろしく頼む。主が望むならば、できる限り何でも揃えよう。私も協力したい」