お題小説

□Animating
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 見たところ10歳くらいの人間が、重そうな鞄を背負って歩いていた。

「なんでオレが…学校なんかに、通わなきゃならないんだ…」

 人間は、苦しげに呟きながら、坂道を上がっていく。


「白柏侑紀は、4月から中学生なんですか。どの学校に行ってるんですか?」

 禿頭に白い顎鬚の老人が言った。

「×××××という学校です。知っているんですか?」

 真っ白でふかふかな椅子に座った人間――白柏侑紀と呼ばれた人間――が、そう答える。
 その人間は先程、鞄を運んでいた人間だった。

「それは、私も知っているんです。レベルが高いですから」

「オレは、出来るんです。だから行けるんです」

 そのとき、玄関の扉が開いて、鞄を背負った人間がふらふらと入ってきた。

「た…ただいま戻りました」

「じゃあ宿題やれ。部屋片付けやれ。食器洗いやれ。カーテン付け替えやれ。夕食作ってやれ。坂出三郎も食べて帰る、多めに作ってやれ」

 鞄を持った人間が、侑紀を見た。

 二人は見分けがつかないほど似ている。
 否、全く同じ。

「坂出様、いらっしゃっていたのですね。了解いたしました」

 人間は、そう言うと、懐からメモを出して命令を書き留め、二階へ上がっていった。

 坂出三郎という老人が、

「あれが“ユーキ”なんですか?」

「そうなんです。生意気なんです。言うことは聞くんです。目線が反抗的なんです」

「そうなんですか。それは大変です」

 そう、侑紀と会話しました。


「ああもう!帰ってくるなり命令すんな!こっちは重い鞄持って帰ってきて、疲れてるって言うのに!」

 二階で、ユーキはそう悪態をついて、鞄を投げやりに床に置いた。
 そして、はあー、と大きなため息を一つついた。一度伸びをして、首を回して、

「うしっ!やるかっ」

 メモを見ながら、命令をこなすべく行動を始めた。


 夕食が済む頃、玄関のチャイムが鳴った。来たのは、サブローだった。

「今晩は、今日は星が綺麗ですな。ユーキ殿」

「ええ」

 坂出と全く同じ風貌のサブローは、ユーキとそう会話を交わすと、
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