お題小説

□天空メッセージ
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『ねえ、止めようよ、キニ』

『ここまで来て何言ってんの、ラティ』

 小さい子どもが二人いる。
 一人は女の子で、一人は男の子。

 女の子は長い黄緑の長い髪を、後ろで一つにまとめてお下げにした、オレンジのワンピース姿。
 男の子は短い黄土色の髪に、濃い緑のやっぱりワンピースのような服。

 二人の前には薄い青の細長い乗り物があって、女の子は今まさに乗り込もうとしていた。

 そこから察するに、男の子はそれを止めさせようとしているのだろう。
 ということは、女の子がやろうとしていることは、許される行為ではないはずだ。
 よくあるパターンだな、おい。

『だって、大人たちに見つかったら、おしおきじゃ済まされないよ』

『見つからなきゃいいじゃない、簡単だわ』

『そ、そんな…』

『ほら、行くわよ!』

 女の子は強引に男の子をそのヘンテコな乗り物に乗せると、自身も乗り込んで出発した。
 乗り物は光速にも近い速さで飛び立ち、空を切り、

『あ……』

『な、何?』

『ガス欠だわ』

 墜落した。



          天空メッセージ



 二人を乗せた乗り物は、飛んでいたときより速く、まっすぐに地面へ吸い込まれるように落ちていった。

 そしてその先端が地面に触れ、潰れ、二人を飲み込んで地面にめり込み、大爆発を起こす――


「っあああああっ!」

 ごすん、と重々しい音が響いて、遅れて腰辺りから痛みが広がった。

「あれ?え?」

 混乱してあたりを見渡して、自分がベッドから落ちたことを認識する。
 え?ベッド?何で?

「……ああ、夢か」

 理解しきった途端、恥ずかしくなった。
 三十代も後半のこの俺が、夢を見てベッドから落ちて飛び起きるとは。
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