ときふるさと
□兄と弟
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「……」
「俺は、そなたを生涯恨む。機会さえあらば、いつでもそなたを殺しに行くからな。――覚悟しておけ」
菅笠で顔を隠して、兄は吐き捨てるように言い放つと、そのまま走り去っていった。
「……」
取り残された時頼は、小さくなっていく兄の背中を見つめて立ち尽くす。
左手は先程の兄の抜刀の瞬間から自らの刀の上に置かれていたが、刀を握ることはなかった。
「…はあー……」
時頼は背後の木に寄りかかって空を見上げると、目を閉じて長く息を吐いた。
兄が放った矢がつけた頬の傷から、顎を伝って血が滴り落ちた。