Forever
□レイダの休日
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「……こうなったら奥の手だ」
妹はそう言うと、大きく息を吸い込んで、
『あーあ!レイダってばケチ!ママさんが知ったらどうなっちゃうのかなー!パパさんが知ったらどうなっちゃうのかなー!』
そんなことを叫びました。
補足。
レイダの両親はこの紅蓮の髪の少女をかなり気に入っています。
具体的に言うと『もう結婚しちゃえば?』と言うほど気に入っています。
そんな彼女にこんな態度をとれば、雷が落ちる程度じゃ済みません。
夕ご飯抜き!なんて軽いものじゃありません。
更に言うと、父親はかなり口が達者です。
母親の握力は四十キロ超えています。
少女は更に叫びます。
『うちの父ちゃん母ちゃんが知ったらどうなるかなー!』
補足。
彼女たちの親は重度の親馬鹿です。
溺愛です。
『近所の人が知ったらどうなるだろうなー!』
補足。
近所の人はレイダをかなり紳士に見ています。
評判が落ちると井戸端の議題にしばらく上がります。
白い目で見られます。
『あーあ!レイダ――』
「分かったよ!何だよ!何の用だよ!」
たまらずレイダは窓を開けて顔を出しました。
かなり怒って大声を出しました。
そして、
「うるさいわね!今良いシーンなんだから!黙んなさいよ!」
昼ドラ好きの近所のおばちゃんに、怒鳴られました。
「……で、何を教えればいいんだよ。アスア」
レイダは兄妹を家に上げると、妹に向かってそう言いました。
「レポートの提出課題。っていうか教えてくれなくてもいいよ。実物見せてくれれば」
「意味無いだろそれ!いつまでも馬鹿だよ、それじゃ」
「大丈夫。兄貴見ればわかるけど、私どう見てもエリートじゃないから」
「見なくてもわかる」
「あ。ひどい」
「……写したらすぐ帰ってよ。すぐ、ね」
「はいはーい」
レイダはため息をついて、自らのレポートをアスアに渡しました。
「おう!どうもー」
上機嫌なアスアを尻目に、レイダは自分の勉強に戻るべく体を捻って、
「よう、レイダさんよ。この写真の子、どう思う?」
上機嫌なアスア兄が、写真を突きつけてきました。
「……あの、僕、勉強したいんですけど」
「いやさあ、彼女、俺にベタ惚れなんだ。俺はまだそういう関係じゃないから止めろ、って言ってんのに、いいじゃない、って腕とかこう――」
「聞いてないし」
「なんだよ。遠慮するなよ」
「した覚えない」
「…お前、年下なんだからもうちょっと愛嬌を持てよ。そして恋愛に興味を持てよ」