Forever

□出会い
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 やがて少年達は、一人の言葉を合図に、皆でとぼとぼと歩き去っていった。


 少女はふうとため息をついて、残った少年を見下ろした。

「大丈夫?」

「……うん」

 少年はぼそりと呟いて、擦り切れた膝が少女に見えないように立ち上がった。

「……あ、ありがとう」

 そしてそのまま立ち去ろうとして、

「ちょっと!怪我してんじゃん!」

 少女に呼び止められた。

「だ、大丈夫だよ、こんなの…」

「大丈夫じゃない!あんた見るからに弱いのに強がるな!」

 見るからにメンタルの弱そうな少年に、少女はさらりと言ってのけた。
 もしこれが漫画なら、少年の頭の上に「見るからに弱い」と書かれた岩が降ってくるところだろう。

 しかし少女はそんな少年の胸の内などまるで無視し、少年を引っ張って座らせた。
 そして目ざとく見つけた膝の傷に、あろうことか持っていた水筒の水をかけた。

「イタッ!」

「うるさいこの軟弱者!男なら我慢せいっ!」

 よく親父が兄貴に言っている言葉を引用して、少女は少年を黙らせた。
 少年は歯を食いしばって痛みに耐える。

 少女は水をかけるのを止めると、ポケットからハンカチを取り出して、傷を覆った。
 ぎゅっと靴紐を結ぶ要領で縛って、少年がぎゃっ!と悲鳴を上げる。

「ようし、これでいいでしょ」

 少女はそう言って額を腕で拭った。

 少年は涙目になりながらも、ありがとう、とお礼を言う。

「いいってことよ。――それより、君、名前は?」

 少女に尋ねられ、少年は涙や傷や泥でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。


「僕は、レイダ。――レイダ・オルデン。一週間前にエリエレアから引っ越してきたんだ」


 すると少女は、びっくりしたように目を見開いた。

「私ん家の隣じゃん」

「え…そうなの?」

「そーだよ。だってこの間オルデンさんが挨拶に来たってママ言ってたもん」

「へえ」

 少年、レイダは呟いて、そうだ、と呟いた。

「あの…名前はなんていうの?」

「私?――私は、」

 少女は勝気そうに笑って、


「アスア・サンディス。よろしくね」


 そう言った。
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