Forever

□第五章
3ページ/14ページ

 リードに名前を呼ばれ、レイダはびくっと震える。

「何で黙ってるんだよ?」

 徐々に不機嫌になっていくリードを見て、レイダはますます慌てた。

「そ、その…今日じゃなきゃ駄目?」

「何で今日言えないんだ?」

「いや…なんとなく」

 普段は語彙力があると先生に褒められるのに、今は驚くほど歯切れが悪い。
 アスアに対してなら、ぽんぽんと言葉が出てくるのに。

 頭が真っ白で、言い逃れる文句も見つからない。

「なんとなくって……」

 リードが唸った。それは明らかに怒りを含んでいて、しかしどこか不満げなような、失望したような響きも混ざっていた。

「もういい。知らない」

「……ごめん、なさい」

 リードが手をひらひらと振ってそう言ったので、レイダは慌てて謝った。

「いいって。お前が俺のこと、その程度にしか思ってなかったのはよく分かった」

「え?」

「…今日もう帰る。不愉快だ」

 言うが早いか、リードはギターと教本を持って多目的室を出て行った。
 扉を思い切り閉めて、ずかずかと荒い足取りで去っていく。

「……」

 レイダは黙って俯いて、静かに息を吐き出した。

 何で言えないんだろ。

 いつかは言わなきゃいけないんだ。
 ならいつ言ったって変わらないだろうに。

 しかも先輩たちが背中を押してくれたのだ。
 『辞めるのがいやなら、練習に出る』
 という、最もそれらしい理由も用意してくれた。

 それだけしてもらって、言えない自分。
 うじうじうじうじ、悩んでばっかりで。臆病で。気弱で。

 本当に、面倒くさい奴だな、自分って。
 そう思わざるをえなかった。

「はあ」

「あ、また」

 無意識にため息をついて、ドーラに指摘された。

 レイダは驚いて口を手で覆って、辺りを見回して、ドーラで視線を止める。

「なんだよ、俺いないと思ったのか?」

「……うん。ちょっと素で忘れてた。ごめんなさい」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ