Forever
□第五章
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リードに名前を呼ばれ、レイダはびくっと震える。
「何で黙ってるんだよ?」
徐々に不機嫌になっていくリードを見て、レイダはますます慌てた。
「そ、その…今日じゃなきゃ駄目?」
「何で今日言えないんだ?」
「いや…なんとなく」
普段は語彙力があると先生に褒められるのに、今は驚くほど歯切れが悪い。
アスアに対してなら、ぽんぽんと言葉が出てくるのに。
頭が真っ白で、言い逃れる文句も見つからない。
「なんとなくって……」
リードが唸った。それは明らかに怒りを含んでいて、しかしどこか不満げなような、失望したような響きも混ざっていた。
「もういい。知らない」
「……ごめん、なさい」
リードが手をひらひらと振ってそう言ったので、レイダは慌てて謝った。
「いいって。お前が俺のこと、その程度にしか思ってなかったのはよく分かった」
「え?」
「…今日もう帰る。不愉快だ」
言うが早いか、リードはギターと教本を持って多目的室を出て行った。
扉を思い切り閉めて、ずかずかと荒い足取りで去っていく。
「……」
レイダは黙って俯いて、静かに息を吐き出した。
何で言えないんだろ。
いつかは言わなきゃいけないんだ。
ならいつ言ったって変わらないだろうに。
しかも先輩たちが背中を押してくれたのだ。
『辞めるのがいやなら、練習に出る』
という、最もそれらしい理由も用意してくれた。
それだけしてもらって、言えない自分。
うじうじうじうじ、悩んでばっかりで。臆病で。気弱で。
本当に、面倒くさい奴だな、自分って。
そう思わざるをえなかった。
「はあ」
「あ、また」
無意識にため息をついて、ドーラに指摘された。
レイダは驚いて口を手で覆って、辺りを見回して、ドーラで視線を止める。
「なんだよ、俺いないと思ったのか?」
「……うん。ちょっと素で忘れてた。ごめんなさい」