Forever

□第三章
5ページ/11ページ

 男の声が消えてから、アスアが言った。

 エナが同意しようと、口を開いて、

「だから、お金なんて持ってません!何度言わせる気ですかっ!」

 今度は女の大声が響いた。
 先程までのか弱さは、微塵にも残っていなかった。

 アスアはエナを見た。
 彼女も、アスアを見ていた。

「黙れ!お前が金持ちのお嬢様なのは見てわかるんだぞ!」

 再び男の声。

「人を外見で判断しないでください!」

 女も負けじと声を張り上げた。

「……」「……」

 アスアたちは無言で見つめ合って、

「ねっ」

「うん」

 同時ににや、と笑った。

 女の方に度胸があるならば、助ける義理もあるだろう。

 二人はそして、再び階段を下った。


 よく知らない男に、いきなり怒鳴られた。
 最初はその恐怖心もあって、ただ震えていた。
 でも、今は違う。

 奨学金とって、必死で学校通ってる私がお金持ち?

 国からの援助だけを頼りに、切り詰めて生活している私の家がお金持ち?

 ふざけないでよ。
 私の体は、怒りに震えていた。

「お金なんか・・・お金なんか持ってません!しつこいですっ!」

 必死に叫ぶが、相手の余裕そうな表情は崩れない。

「よく言うよ。全身から金持ちオーラ出してんのにさ」

 どうしたものだろうか。
 相手の体格から見ても、自分の負けは確実。
 ならば、どうやってこの場を打開する?

「ほら、早くしろよ!」

 その時だった。

「・・・可愛い後輩に乱暴なんて、大人気ないですね、先輩」

 そう言って、少女が一人、現れた。

「ああ?なんだ、てめえ」

「その子の友達ですが」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ