Forever

□第二章
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 文句になるはずだった言葉を飲み込んで、レイダは慌てて返した。

「ありがとう」

 素直にお礼を言うと、ビクターはにやりと笑って、

「どーいたしまして」

 それだけ言って、ドラムのスティックを持って準備室を出ていった。

 レイダは1人、準備室の入り口に立ち尽くす。

「……」

 ものすごく、違和感を覚えた。


 レイダが音楽室に戻ると、リードが既に来ていた。
 クアルはベースの練習に戻っている。

「あ、よお」

 レイダに気づいたリードはそう声をかけた。

「…うん」

「ん、どした?レイダ」

「今さ…ビクターって人に会った…」

 レイダがそう言うと、レイダを除く全員が驚いた。
 場の空気が、一瞬で変わった。

「そ、それでどうした?なんか言われたか?」

「ううん。ギター取ってもらっただけ」

「…そうか、良かった」

 レイダの言葉に、リードは安心したように息をついた。

 レイダが首を傾げると、

「あ、いや、お前に変なこと言ったんじゃないかって不安になって…」

 リードが慌てて言った。

 レイダは嬉しくなって、

「大丈夫。心配してくれてありがとう」

 そう、笑顔で返す。

 リードもまた笑って、

「どーいたしまして」

 そう返した。

 その瞬間レイダの脳裏を、ビクターの姿が通り抜けた。
 リードと同じ台詞を言った、あの時の姿だった。

 彼がリードの言うような悪い人間だとは、とても考えられなかった。

「……」

 レイダは再び考え込む。
 リードが心配そうに大丈夫か?と声をかけた。

「あ、うん。大丈夫。――練習しようか」
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