Forever
□第二章
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「はあ…」
廊下を歩きながら、レイダは何度もため息をつく。
こんなはずではなかった。
レイダが想像する部活動生活は、こんなものじゃなかった。
部活に入ることなど、皆にとっては簡単なことかもしれない。
でもレイダにとっては、それすらも充分に“でっかいこと”。
だから、部活でこんな思いだけはしたくなかったのだ。
人生初の部活で人の機嫌を伺いながら、最終的に服従してしまう。
そんな思いだけは、したくなかったのに。
「はあ…」
だからレイダはため息をついた。何度も、何度も。
叶うことのなかった幸せが、逃げていくような味がした。
* *
レイダが音楽準備室に入ると、そこには既に先客がいた。
「あ…」
レイダは思わずそう呟く。
その理由が分かった先客の少年は少し顔をしかめた。
その少年は、活動開始日に遅れて来た、リードと仲の悪い少年だった。
リードの話では、彼とは同じクラスで、ビクター・タナという名前らしい。
その性格は執念深く、きわめて乱暴なのだとか。
リードは彼に従わされていたクラスメイトを庇ったため、目を付けられたのだそうだ。
「……」
こいつがこの間リードを怪我させたんだ、レイダは思った。
レイダは敵意を剥き出しにしてビクターを見る。
何か言ってやらねば気が済まない、レイダはそう考えた。
そして腹を決めて、口を開く。
「いい加減――」
「ん」
いい加減にしてよ。
レイダはそう言おうとした。
しかしその前に、彼の鼻先にビクターは何かを突きつける。
「お前のだろ」
そう言う彼の手にはエレキギターが握られていた。
「あ、うん」