Forever

□第一章
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「邪魔だ。どけどけ!」

 と怒鳴りつけながら、その直前を別の先生が通り過ぎていく。

 待って。
 待ってよ。

 レイダの必死の叫びも空しく、紙は幾人の人間によって踏まれる。

「……」

 人がいなくなって、再び静けさを取り戻した時、紙は折れ曲がって、黒ずんでいた。

「……」

 レイダは肩を落とすと、紙に近づいた。
 そして拾い上げようとして、

「あっ」

 誰かに先を越された。
 その“誰か”は、拾い上げた紙をきれいに伸ばすと、

「うん。まだ読める」

 そう呟いて、にっこり笑いながらレイダに差し出した。
 そしてこんな言葉。

「俺も軽音部入りたいんだ。一緒に出しに行かない?」

 レイダは一瞬驚いたが、笑顔で紙を差し出す少年を見て、笑顔になった。

「うん。――行こう」

 心の中で、ありがとう、と呟きながら。


 少年はリードと名乗り、軽音部ではギターをやりたいと言った。

「奇遇だね。僕もギター志望なんだ。他のは難しそうというか、近寄りがたいからさ」

「確かに。ギターが一番身近だよな」

 レイダがそう言うと、リードも賛成する。

 気の合う二人は自然と話すことが多くなり、次第に仲良くなっていった。
 ギターの話も盛り上がり、二人でお揃いのエレキギターを買う約束までしていた。

 今までレイダの周りにはギターに興味のある友達はいた例がない。
 だから、彼は夢中になってリードと話した。

 リードのお陰で、レイダの軽音部への期待は更に高まっていた。


「レイダー、今日お昼一緒に食べようよー」

「やだ」

 入部届の一件から二日経ったある日。
 アスアはレイダを誘ったが一瞬で断られた。

「なっ、なんでよーっ」

「嫌なものは嫌だよ」

「だけどさ、もう少し答え方ってものが――」

 アスアが喋っているにも関わらず、レイダは走り去ってしまった。
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