Forever
□第一章
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アスアはそう言うと、用は済んだとばかりに立ち上がった。
そのまま図書室を出ていく。
アスアが見えなくなったのを確認すると、レイダは鞄から一枚の紙を出した。
“入部届”と書かれたその紙を数秒眺めて、ため息をつく。
「僕っていう人間の中心は僕だもんな」
アスアは代わりにやってくれない。
そんなのはよくわかっていた。
でも不安だった。
入部希望者は自分だけではないのか。
先生たちの期待を裏切ることになるのではないか。
そもそも自分に出来ることなのだろうか。
きちんと最後まで出来るだろうか。
「…こんな事じゃ、何にも出来ないのに」
わかっているけど。
僕は臆病だから。
「……はあ」
レイダは深いため息をつくと、改めて入部届の紙を見た。
小さく端正な字で、そこにはこう書かれていた。
軽音部、と。
* *
昼休み。
レイダは入部届を持って職員室に向かった。
「もう…逃げない。僕はやるんだ。でっかいことを、やるんだ」
レイダは自分に言い聞かせるように呟くと、ドアに手をかける。
ドアまであと一センチ。
レイダの手が震え出す。
「……もう少しっ」
ドアまであと五ミリ。
全身が震え出す。
「……っ」
ドアまであと二ミリ。
とうとう入部届が指から滑り落ちた。
「あっ」
紙は掴み直そうとしたレイダの指をすり抜け、大きく横滑りするように落ちていく。
慌てるレイダからだいぶ離れた位置に紙は着地すると、その直後、
「あっ、だめ――」
というレイダの叫びも空しく、歩いてきた先生に踏みつけられた。
レイダが慌てて駆け寄ろうとすると、