Forever
□第六章
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話をしていたエナは頷いて、表情に憂いを滲ませた。
「まあ実際にはあんたはいなかったからね。怖くなかったと言ったら嘘だけど、我慢の限界だったし、私が行ったのよ」
その言葉に、アスアとミウリルが目を丸くした。
「一人で?」
「うん」
「ど、どうして?」
エナが顔を上げて、
「私が、留学生の親友だったからさ」
事件から半年、つまり留学生が来てから一年が過ぎた頃。
留学生と同じクラスで仲が良かったエナが、男子生徒たちから留学生を庇おうとした。
当時、学校一決断力と行動力があった彼女を応援しながら、しかし先生も生徒も協力はしなかった。
その結果、彼らは逆上してエナに対し暴力を振るい、エナの敗北に終わった。
怪我こそ軽かったが精神的なショックは大きく、彼女の以前のような行動力は消えてしまった。
そんな彼女を見て、先生や生徒はいっそう後込みをするようになる。
一人を除いて。
「情けない話だけどさ。最初、あいつを名前で呼んだら、人を気安く名前で呼び捨てするなって怒鳴られてね。その声の大きさっていったら――、たったそれだけで震え上がっちゃったんだ」
独白するような口調でエナは静かに語った。
アスアは優しく微笑んで、
「それで、よく知らない人は名字で呼ぶようになったんだ」
「……うん。なんか、トラウマで」
「そっか。まあ、仕方ないよ。私も初めて喧嘩したときは負けたし」
「へえ」
エナとミウリルが意外そうな顔をして、
「その時は兄貴に助けてもらって、次の日には復讐したけどね。四歳のときだったかな」
その言葉を聞いて呆れた。
ミウリルが軽く咳払いをして、エナに続きを促す。
「ああ、うん。――私が負けたのを知ってね、二年の先輩の一人がさ、仇をとってやるって言ってきたんだ」
エナの失敗から一週間も経たないある日、エナにとって一つ年上の先輩である男子生徒が、調子に乗った男子生徒たちの態度を見かねて彼に抗議に行った。