Forever
□第六章
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「……その話、知ってる」
ぽつりとレイダが呟いた。
「前々から有名だった不良の男子が、転校生に怪我させたって」
「まあ、そこまでは地元の奴なら誰でも知ってるよな。誰がやったかは知ってる?」
レイダはしばらく黙った。
「……。ビクターだって聞いた。リードから」
ビクターは面白いようにばつの悪そうな顔をして、ぷいとそっぽを向いた。
結局、留学生を含む数人に怪我をさせてしまった男子生徒は、しかし何の罰則も喰らわなかった。
表向きは停学処分だったが、実際は彼が学校をサボっていただけだった。
「ええ! なんで?」
アスアが驚愕して叫んだ。
ミウリルがその声に驚いて肩を揺らす。
エナは軽くため息をついた。
「先生たちもあいつが怖かったんでしょ。実際けがさせられた先生もいたし。学校をサボってこなかったから、“ちょうどいいや、謹慎ってことで”ってなったんだと思う」
「なにそれ、信じられない!」
「留学生が可哀想……」
怒って眉を吊り上げるアスアと、同情して眉を下げるミウリルを見ながら、エナは懐かしむように目を細めた。
「私もそう思った。今も、あの時も」
先生たちが処罰を下さなかったことで男子生徒は調子づき、留学生を脅したてては自分の思うままに行動させるようになった。
更にそこに、男子生徒とよく一緒にいた仲間二人が混ざって、留学生は三人の先輩に怯える日々を送る羽目になった。
留学生に逆らう術はなく、彼らの言いなりになるしかなかった。
先生や生徒もそのことに気づいてはいたが、逆上を恐れて止めに入れる者はいなかった。
「なんなのそれは! ますます信じられない!」
ぷんすか怒りながらアスアが言えば、
「本当に……。まだ、新しい土地に馴染みきれてはいないでしょうに」
ミウリルも頬を膨らませて呟く。
「本当、あの中学校にアスアがいたらって何度も思ったんだけどさ」