Forever
□第六章
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「どういう、こと?」
床に座り込んだままのレイダの言葉に、
「まあ、こんな所で話すのも何だし、帰りながら話そう。家はどこなの?」
立ち上がりながらビクターが言った。
レイダが場所を答えると、驚いたように目を瞬いて、
「そこって、あのでかい一軒家?」
「え? えっと、そうかな?」
「か、金持ち……。親って、仕事なに?」
「えっと、一応、母さんが考古学者。父さんが大学教授」
「げっ! エリートじゃん。でかい家に住んでるわけだ」
「……そんなに大きくないと思うけど」
「……。お前そういうのあんまり言わない方がいいぞ。聞く奴が聞けばただの嫌味だぞ」
「あ、そうなんだ。分かった」
「分かれば宜しい。しかし羨ましいなあ。俺んちなんてあの半分もないぜ、きっと」
他愛もない会話を交わしながら、二人は階段を降りて校門に向かった。
「それで、リードのこと、」
学校を出てすぐに、レイダは切り出す。
「ああ。最初に言っとくけど、レイダには信じられない話かもしれない。でも俺は誓って嘘は言わないからな」
「う、うん……」
レイダが不安そうに頷いたのを一瞥して、ビクターは前を向くと、
「中学校の頃の話だ。俺はリードたちと同じ学校に通ってたんだ」
ゆっくりと、話し始めた。
時間は少し遡り、アスアが初めてビクターに出会った日の理科室。
「わかった。けど、ここだけの話だよ。――中学の頃の話なんだ、私とリード、クアル、ドーラは同じ学校行ってた」
アスアとミウリルを前に、エナがとつとつと話し始めた。
ビクターたちが中学二年のとき。
彼らの学校に、留学生がやって来た。
決して都会とはいえないこの地域に留学生が来ることはかなり珍しく、彼は学校のみならず地域中の人々に歓迎された。
ビクターたちの学年もまた、後輩に当たる彼のことで噂は持ちきりになり、“留学生”という言葉を聞かない日はないほどだった。
そうして留学生と親睦を深めていって、半年ほどが経った頃。
彼をよく思わなかったとある男子生徒が突然、廊下ですれ違った留学生を殴り飛ばすという事件が起こった。
“お前見てると頭に来るんだよ!”と男子生徒は罵りながら、倒れ込んだ彼を蹴り飛ばし、更には止めに入った先生や生徒にまで暴力を振るった。