かけらことばのおんなのこ
□8
1ページ/8ページ
いつの間にか眠っていたらしい。
目を開けるとそこは平凡な午後の教室で、時計の針は四十分ほど進んでいた。
眠気が抜けない怠い体を無理に起こして、覚醒していない頭で状況把握を試みる。
教室。黒板。教壇。学級委員。
ああそうだ。
今はホームルームの時間だ。
俺が把握したと同時に、突然、拍手が鳴り響いた。
一瞬で我に返る。
「それでは過半数の賛成がありましたので、決定とします」
やる気のなさそうな委員長の声が聞こえた。
どうやら今の拍手は何かの採決だったらしい。
何の話だかさっぱり分からないので、黒板に目をやった。
お化け屋敷、人間すごろく、仮装大会、タピオカ、焼きそば……。
「ああ、文化祭か」
そういえば一ヶ月ほどで、そんなイベントがやってくるっけ。
それで結局は何をやるのかと、たった今書記が赤いチョークで強調を入れた項目を見た。
見てしまった。
『執事喫茶』
誰か嘘だと言って。
* *
「なんでよー。いいじゃん、執事!」
「どこがだ! 女子が面白がってるだけだろ!」
「そうだよ?」
「だー! もう!」
完全に面白がっている蘭奈の頭を、ぺちと叩いておいた。
「イテ」
やれやれな話である。
時は流れ、今は放課後。
蘭奈と下校する道すがら、ホームルームでの顛末を聞いたところである。
曰く、男子全員と一部の女子が執事役としてホールを担当し、残りの女子が裏方をするという寸法だ。
メイドならまだしも、なぜ執事。
「ってか一部の女子ってなんだ? それこそメイドだろ……」
「え、なに慶太。メイドさん萌え?」