Forever

□第三章
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 周りに気が配れる、そういうところだよ。
 変わりに、心の中でそう呟いた。

「あ、そうだ、リィンは?」

「ああ、シェナーズ?あいつならいいかもね。割と気が合うし」

「でしょでしょ!ナイス私っ」

 アスアが歌うように言って、スキップを踏む。

「じゃあ早速、リィンに聞きにいこ」

「でもあいつ、もう帰ったんじゃない?」

「あ、そっか。じゃあ職員室で電話借りる?」

「それがいいかもね」

 二人はそんな会話を交わし、階段を下りはじめ、

「ちょっと待てよ!」

 そんな、えらく野太い男の声を聞いた。

「で、でも私――」

「逃げんなって」

「や、止めてください!」

 男と会話しているのは、いかにもか弱そうな女の声。

 エナは眉をひそめ、耳をそばだてた。

 アスアは、砂糖と塩を間違えて食べた時のような顔で固まる。

「何の騒ぎだろ」

 エナが小声で話しかけてきて、

「…ナンパとか?」

 アスアは肩をすくめて言った。

「やっぱり?やれやれよね。ここ本当に学力トップ校?」

「ね。私が入れた時点で怪しいとは思ってたけど、やっぱ最近落ちてるのかもね」

 二人はそんなことを言って、その場を立ち去ろうとする。

 助けようなんて気は、さらさらなかった。
 男が一方的にあの状況を作っているなら、話は別。
 しかし、この場合女にも責任はある。

「あんな猫撫で声じゃ、当たり前よね」

「本当。お高い女は大嫌い」

 エナが言って、アスアが同意した時、

「早くしろよ!」

 男の怒号が響いた。
 思わず二人は、肩をすくめる。

「…あーあ、女の方は今頃ビクビクしてるんだろうな」
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