かけらことばのおんなのこ

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 いつの間にか眠っていたらしい。
 目を開けるとそこは平凡な午後の教室で、時計の針は四十分ほど進んでいた。

 眠気が抜けない怠い体を無理に起こして、覚醒していない頭で状況把握を試みる。
 教室。黒板。教壇。学級委員。
 ああそうだ。
 今はホームルームの時間だ。

 俺が把握したと同時に、突然、拍手が鳴り響いた。
 一瞬で我に返る。

「それでは過半数の賛成がありましたので、決定とします」
 やる気のなさそうな委員長の声が聞こえた。
 どうやら今の拍手は何かの採決だったらしい。

 何の話だかさっぱり分からないので、黒板に目をやった。
 お化け屋敷、人間すごろく、仮装大会、タピオカ、焼きそば……。

「ああ、文化祭か」

 そういえば一ヶ月ほどで、そんなイベントがやってくるっけ。

 それで結局は何をやるのかと、たった今書記が赤いチョークで強調を入れた項目を見た。
 見てしまった。


『執事喫茶』


誰か嘘だと言って。


   *   *


「なんでよー。いいじゃん、執事!」

「どこがだ! 女子が面白がってるだけだろ!」

「そうだよ?」

「だー! もう!」

 完全に面白がっている蘭奈の頭を、ぺちと叩いておいた。

「イテ」

 やれやれな話である。

 時は流れ、今は放課後。
 蘭奈と下校する道すがら、ホームルームでの顛末を聞いたところである。
 曰く、男子全員と一部の女子が執事役としてホールを担当し、残りの女子が裏方をするという寸法だ。
 メイドならまだしも、なぜ執事。

「ってか一部の女子ってなんだ? それこそメイドだろ……」

「え、なに慶太。メイドさん萌え?」
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