かけらことばのおんなのこ
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こんにちは。西間慶太です。
今ちょっと困っています。助けてください。
何故かって、目の前にいる美女さんが顔真っ赤にして目を三角にして頭から湯気を立てて――、つまり怒ってですね、
「女の体がただエロいだけだと思ったら大間違いよー!」
とか叫んでるんです。
いや、怒らせたの俺じゃないですからね? 俺知らないからね?
――話の始まりは、中間テストの実施前に遡る。
* *
「西間! 今日行かない?」
「主語を言え、主語を」
「決まってんじゃん。双子ーズのお店」
センセイの店に行った翌水曜日の放課後、有田がそう声をかけてきた。
朝からそわそわしてると思ったら、そんなことか。
ていうか――、
「行かない。行くわけない」
「えー。なんで?」
「いやいや、俺しばらく水曜は行かないって言っただろ。それに、今週からテストだぞ」
「テストなんかどうでもいいじゃん」
「良くない。お前なあ、いい成績取っておけば大学が推薦で決まるかもしれないんだぞ」
「大学の心配なんてまだいいじゃん」
「いやいやいや。早いやつはもっと早い――」
「だあああ! もういいって! なんなの大学だ勉強だテストだって!」
「いや、高校生としては当然の悩み――」
「うるさい! そんなに勉強が大事なの?」
「大事だろ。大事だ」
「二回も言うな! じゃあ聞くけど、彼女より大事だっていうわけ?」
「……」
面白いように黙り込んだ俺を見て、有田はちょっと“してやったり”な顔をした。
しかし次の言葉で、その顔は一瞬にして崩れる。