かけらことばのおんなのこ
□6
1ページ/15ページ
「おれがティアラさんの店に行ったときにはもう有田さんがいたんだ。それで二人して、なんだか真剣な顔で話し合ってて」
あの日、泰都は確かにそう言った。
本人のいない所でこそこそ嗅ぎ回るのもどうかとは思うが、今はどうしても詳しい話が知りたい。
だから俺は、ティアラに会いに行くと、すなわち金曜にあの店に行くと心に決めた。
* *
心に決めた。
はずだったのに。
「よお慶太、ちょっと付き合えよ」
マークの件の有田といい、なんで邪魔されるんだ。
「何だよ、涼太。俺、行きたい所あるんだけど」
「えー。そんなこと言わずにぱーっと行こうぜ! プチ傷心旅行だよ」
「誰も傷心じゃないんだけど」
「付き合い悪いなあ。寂しいぞ」
涼太は全く寂しくなさそうに言って、がしっと肩を組んできた。
この能天気といると、俺まで能天気になってくるから不思議だ。
「仕方ないな。久しぶりに遊びにでも行くか」
「おう! カラオケがいいな!」
「お前が誘ってきたんだから、おごりな」
「なんだとっ?」
気の抜けた会話をしながら俺たちは校門をくぐり抜けた。
少しばかり久々のカラオケを楽しんだらすぐ“あの茶店”に向かおう、そう思ったのだが、何だかすっかりはまってしまって気がついたら夕飯の時間になっていた。
フリータイムって恐ろしい。
「じゃあな、慶太。元気出せよ!」
「ありがとうよ……別に、今も元気だけどな」
どちらかというとお前のせいで落ち込みそうだよ、と言いたいのをぐっと堪えて、涼太と別れた。
――さて。どうしたもんだか。来週の金曜までこうしてモヤモヤするしかないか。
「おい。おーい。慶太」