お題小説
□ココハキミハ
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気がつけば、自分がいたのはベッドの上だった。
色を失ったかのような一面の白が、感覚が冴えるのを妨げている。
「……」
だから、僕はたぶん虚ろな目をしていたと思う。
焦点がはっきりしていなくて、もしかしたら涙で潤んでいたのかもしれなかった。
ここは、どこだろう。
『何やってんの!そんなところに突っ立ってないで、さっさと来なさい!』
声が聞こえて、僕は左脇へと視線を振った。
白の中に、ぽっかりと銀の四角いフレームがあって、その中は外が映っていた。
窓枠に肘を突いて、人影がこっちを見ている。
『足があるんでしょ!歩くための足でしょ!今使わないなら、いつ使うっていうの!』
実際の僕は、じっと微動だにせずベッドに横たわっていた。
だけど幽体離脱でもしたのか、僕は立ち上がって彼女の手を取った。
幽体離脱の割には、彼女の手を取った僕は、まだずいぶん幼かった。
『ようし。今から、あたしがあんたの思い出だからね』
人影は、幼さを残す女の声で、とても自信満々に言い切った。
「……」
白がぼやけて、眦から耳に向かって暖かい雫が伝う。
もうちょっと眠ることにする。
白は上下から迫る黒に染められて、その白さを狭めていき、やがて真っ黒になった。
意識が黒の底に沈んでいく心地がしながら、僕は幽体離脱した片割れの方に乗り移った。
微かに高揚する気分と共に、夢の世界へ、すなわち記憶の彼方へ迷い込む。
ココハドコ。キミハダレ。