Forever

□出会い
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「――っ!」

 男の子が一人、地面に勢いよく尻餅をついた。
 自分で意図していないからだろう、男の子の顔は痛みに歪み、着いた手や足に小さな擦り傷がいくつもできた。

「やーい、弱虫っ」

 転んだ男の子の真上に被さるように、影が三本ほど伸びた。
 真ん中のいかにもいたずら好きそうな、日に焼けた男の子がへへんっと笑う。

「都会生まれだからって偉そうにしてんじゃねえぞ!」

 日焼け少年に続いて、他の男の子たちも声を揃える。

 そーだそーだ!
 お前なんか、都会に帰っちまえ!

 突き飛ばされた男の子は、今にも泣き出しそうな顔をした。

「ち、違うよ…」

 こぼれた言葉はあまりに弱々しく、かえって立っている少年たちの怒りを大きくさせた。

「なんだよ、そんな小さい声じゃあ聞こえないぞ」

「ち、違うよ!……偉そうにしてなんか、ないよ」

「嘘つくなよ!」

 少年たちの怒りは静まらない。
 三人のうち一人が、足下の小枝を拾い上げた。

「お前なんか、また引っ越しちゃえばいいんだ!」

 それを、座り込んだ少年に投げつける。
 周りの少年たちも一緒になって、次々と枝や小石を拾っては投げた。

 座り込んだ少年は、顔を手で覆って、痛い痛い、と蚊の鳴くような声で呟く。

 そして、いよいよもって少年は泣き出した。
 わんわんと、声を上げる。

「やーい、泣き虫ー」

 いじめっ子少年達が、楽しそうに囃し立てた、その時だった。


「ちょっとあんた達!いい加減にしなさい!」


 強そうな女の子の声が響き渡った。

 いじめっ子達は声の主を知っているのか、若干引きつった顔をそちらに向ける。
 座り込んだ少年も、ちらとそちらを見上げた。

 立っていたのは、紅蓮の髪をきらめかせた少女。
 その髪と同じ紅の瞳を細めて、仁王立ちで少女は言った。

「引っ越してきた子には、優しくしなきゃいけないんだよ!というより弱い者いじめは私が許さない!」

「な、なんだよ!――だってこいつがいけないんだよ、都会育ちだからって…」

 少年達の言い訳に、少女は更に眉を吊り上げた。

「都会は都会で大変なのよ!」

 何やら言っていることは多少ずれているが、それでも効果はあった。
 怒鳴りつけただけに、少年達は背筋を一瞬で緊張させる。

 それだけで、この少女がこの辺りでどのような存在なのかがよくわかった。

「…ちえ、行こうぜ」
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