Forever

□第五章
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 提案してみます。
 なんて、言うのは簡単だった。

「でもな…実際に言うとなると厳しいんだよなあ…」

 レイダは独り言ちて、彼の部室である多目的室に向かった。
 ドアをガラガラと開けて、中に入る。

 中には既に、リードとドーラがいた。
 相変わらず、クアルの姿は見えない。

「おお、レイダ。昨日どうしたんだ?大丈夫かよ」

 リードが真っ先に声をかけてきた。

 レイダは曖昧に返して、手近な椅子を引いて座る。

「…本当に平気なのかよ?」

 リードが不安げに尋ねて、レイダは慌てて、

「うん、も、もちろん!今日はなんか、授業疲れちゃって…」

 そう取り繕った。

「ああ…確かに、授業って辛いもんな。よく皆真面目に受けてられるよ。俺は駄目だ」

 リードは信じたのか、そんな風に同意した。

「あはは…まあね」

 授業に辛さを感じたことのないレイダは、なんと言ったら良いか悩み、結局どっちつかずに返した。

「ま!それはそれ、これはこれ。部活なんだ、目いっぱい練習しようぜ!」

「うん…そうだね」

 レイダはそう言って、ギター教本を開いた。
 リードとドーラも、各々の練習に取り掛かる。

 レイダはバレーコードのページを開いて、そのまま適当にギターを弾き始めた。
 教本を読んでいるつもりなのだが、集中できない。

 この雰囲気の中、どうやってあんな提案をしろと?

 欠席の旨を自分で部長に伝えることもできなかったのだ。
 自分にできるわけがない。

「はあ…」

 レイダはため息をついて、ふと隣を見た。

 リードがバレーコードを練習している。
 教本通りに弦を押さえて、ピックを使って一気に六弦全てを弾く。

 じゃーん。きちんとした和音が響いた。

「……」

 そもそも練習に出てこないクアルは別にすると、レイダは一番上達が遅い。
 バレーコードはおろか、普通のコードですら、確実に弾けない。
 こんな状況であんな提案をしたら、下手なくせに、と言われるのが関の山。

 自分にあんなことを言う権限なんてない気がした。

「はあ…」

「またかよ。ため息ばっかり。なんだっての」
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