かけらことばのおんなのこ
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「な、なんだよ。うるさいはひどいだろ?」
「もう言い訳はいいよ。聞いてらんない」
有田はぴしゃりと言い切って、それから俯いて、
「……分かってたよ」
ぼそり、とそんな一言。
「え?」
「分かってたって言ってんの。あんたが深く考えもしないであんな事言ったって、分かってる。勉強の方が大事って言っただけだもんな」
「お、おう……」
「分かってるけど、やっぱり面と向かって言われたのは辛かったよ。なんだか淋しかったよ」
「ごめん……」
「だから、こんな事になって、最初はちょっといい気味だなって思った。訳分かんないって顔してる西間を見て、ざまあ見ろって」
「……」
「でもすぐ後で、すごく後悔した。西間に悪気はないって分かってるのに、私は何をやってるんだろうって」
俯いたままの有田を見て、俺はいよいよ腹を決めた。
「有田。教えてくれよ。本当のことを全部」
* *
俺が勇気を振り絞って出した問いかけは、次の瞬間大きく開け放たれた扉によって遮られてしまった。
カラァン。
やけにうるさく鐘が鳴り響く。
想が弾かれたように振り向くのを目の端で捉え、俺も慌てて入り口に目を向けた。
その際に有田が驚いた顔で入り口を見ているのも目に入った。
そして店に入ってきた人間に視線が集まる。
その人物は、
「……え?」
大きく目を見開いて、その場に立ちすくんだ。
意味が分からない。
こいつが。なんで。今、ここにいる?