かけらことばのおんなのこ

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「……。せ…せ、関口、紗綾…さん」

「へ…?せきぐちさーや?」

「うん……」

 知っている名前がくると思っていた俺は、少しばかり面食らった。
 ――なんだって反応しよう。

「そ、そうなの…」

「うん…」

 お互い気まずくなって、俺たちはそれぞれ反対にそっぽを向く。

 早く双子戻ってこいよ。
 俺はちらりと双子が消えたのれんの方を見て、

「ありゃっ?」

 双子はとっくに戻っていた。
 有田らと混ざって盛り上がっちゃってる。

「なんだよ双子野郎、戻ってきてたのか」

「野郎はひどいなあ慶太さん」

「せめて坊主とか小僧とかにしてよ」

「それってあんまり違わないよな」

「まあね」

「そうかもね」

「いちいち両方喋らなくていいっつの」

「…じゃあ壹しばらく黙る」

 壹が仕方ないと言った体でむくれる。

「じゃあ映しばらく喋る。泰ちゃんと何話したの?」

「え、あ、んーと…まあ、男の話だ」

 とっさに思いついた言い分に、ぶふうっ、と有田が盛大に吹き出した。
 有田が。

「ぎゃははっ!“男の話”なんて言い方、女がするもんだよ普通」

「だよねえ!やだ慶太クンってば、ホモっぽい」

 桃花もそう言うと、有田同様高らかに笑い出した。

「う、うるさいなあ!人の間違いを笑うなっ」

「ははは、まあまあ慶太さん、ドンマイだよ」

「映に言われてもイライラ増すだけなんだが」

「ええー、ひどいなあ。――まあ、実際、つまるところ紗綾さんのことでも話してたんでしょ?」

「あ……いや、」

「ごまかさないでも、蘭ちゃん以外みんな知ってるよ。ねえ、泰ちゃん?」

「え、そうなの?」

 泰都を見れば、顔真っ赤で俯いたまま、こくこくと頷いている。
 なんだよ、俺恥かき損じゃん。
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