かけらことばのおんなのこ

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「…なんとも詩的な表現をありがとう。将来は芸術家か何か?」

 具体的な説明を求めていた俺は軽く引いて、少し嫌味っぽく言った。

 しかし泰都は驚いた顔をして、

「どうして分かったの?おれ、美大目指してるんだよ」

「まじで?…凄いな。なんかごめん」

「何が?」

 嫌味を言った俺は、いたたまれない気持ちになった。

「いや、何でもない。気にしないで」

「あ、そう?――ところで、一つ聞いていいかな」

「ん?」

「あそこで桃花ちゃんたちと話してるのは、君の友達?」

 心なしか真剣な声で、泰都は真顔で聞いてきた。

「え?…あ、一応、彼女」

「やっぱり?それはなに、君が告白したの?」

「…いや、あっちから」

「……。そっか」

 ほんの少し落胆の色を滲ませて、泰都は苦笑いを浮かべた。

「えーと、なんで?」

「えっ、あ、いや…そのっ」

 わかりやすく慌てた泰都は、

「あー、もしかして、好きな人、いるとか?」

 俺の言葉に、顔を真っ赤にした。
 ――わかりやすい。

「でもって、俺に告白の経験があったら、その話でも聞こうと?」

 泰都は、更に顔を赤くした。

「最終的に、自分が告白するときに参考にしようと?」

「なっ、告白なんてっ、で、でできないよっ」

 俺は大いに呆れた。
 なんてシャイボーイなんだ。

「……ちなみに、誰が好きなの」

 泰都は一瞬驚いた顔をして、すぐに赤面して俯いて、

「――てっ、げほっごほっ」

 一文字だけ発してむせた。

「だ、大丈夫かよ」

「うん…へ、平気」

 泰都は深呼吸をすると、咳払いを一つして俯いた。

「で、誰なのさ」
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