かけらことばのおんなのこ

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 二人はそう言って、相変わらず変わっていない、のれんの向こうに消えた。

 唐突に名前を出され、俺は面食らった。
 初対面と何を話せと?

 縋るように有田を見やると、駄目だ、あいつ双子ちゃんとガールズトークしてら。

「蘭チャンってー、なんで慶太クンと付き合おうと思ったの?」

「うーん、分かんない。当時は何かしらが良いと思ったんだろうけど…」

 なんだとう?失礼な。

「あー分かるー!アタシも今、よく分かんなくなってきたもん」

「桃花ちゃん、彼氏いるの?」

「桃はね、超年上なの。今年30とかだっけ?」

「27だよぅ。エンコーと間違えられて困るのよー」

「えー、失礼だね」

 いやいや有田、妥当だから。

「あの…、け、慶太くん?」

 不意に隣から声がして、俺は慌てて振り返った。
 気弱そうな少年が、こちらを見ている。

「あ、はい、なんでしょう」

「いや…あの、敬語は止めてほしいというか、」

「でも、受験生でしょ?俺は高校二年だから、後輩ってことになりますけど」

「あ、うん、でもおれ早生まれだから、年齢的には同い年なんだ。だから敬語はなしで」

「まあ、いいけど」

「自己紹介がまだだったよね。――川口泰都(かわぐちたいと)。高三で、17で、受験生だ」

「俺は西間慶太。高二でもうじき17歳。よろしく」

「よろしく…というか、実はおれ、君のこと知ってるんだ。壹と映に聞いたから」

「…ほんと俺有名人だな。そんなに珍しいのか?」

「うーん。想が気に入った人って、おれが知るかぎりじゃいないからね。複数の曜日に来るのも、君以外だと…おれぐらいじゃないかな」

 泰都は心なしか照れくさそうに笑った。

「へえ、あんたもいくつか行ってんのか?」

「ああ。一応、この水曜日以外は火曜日と……金曜日に」

「すると、ノッカさんと……誰だったっけ」

「えと、…っ、…ティアラさん」

 泰都は一度何かを言いかけ、言い直した。

「ああそうそう!マークが言ってた。俺行ったことないんだ。どんな感じ?」

「良い人だよ。ちょっとずれてるところあるけど、天然というか、癒し系というか」

「……ああ、うん、俺、店のこと聞いた」

「あ、そうなの?ごめん…えっとね、アットホームな感じ。すごく暖かくて、優しくて、でもちょっと不思議な感じで」
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