かけらことばのおんなのこ

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「……」

 俺の言葉に、双子くんはきょとんとして、互いの顔をしばらく見つめあった。

「どしたの?」

 俺が聞くと、壹が振り向いて、

「そんなに店員に詳しいってことは、もしかして……西間慶太さん?」

「…そうだけど」

「えええっ?やっぱり!」

「何で最初に言ってくれないの?」

「え…いや、必要がないというか、」

「なくないよ!」

「僕ら君のこと尊敬してんだよ!」

「…はい?」

「教えてよ!」

「どうやったらあんなに想を夢中にさせられるのさ!」

「……へ?」

 俺は目を白黒させた。
 隣で、有田が心なしかむっとした顔をしている。

「なあに、想ちゃんって慶太をどういう目で見てんの?」

「ん?――ああ、大丈夫大丈夫。そういう意味じゃなくて」

「想って、普通の女の子から感情を引いたような子で」

「その感情の中には恋愛感情も含まれるから」

「結果的に恋愛に興味ないよ、あの子」

 壹と映がのほほんと答えると、有田はちょっと納得した顔になった。

「じゃ、夢中ってどういうこと?」

「それは…だって想、僕らに対しては、たまに名前も忘れるくらい扱いひどいのに、」
「慶太さんのことは覚えてるどころか、自分から他の店員たちに話振るくらいだからさ」

「ずるいなぁーって」

「僕らも想のお気に入りになりたいなーって」

「なるほどね…」

 有田が納得したところで、俺は時計を見た。
 ここに来て、既に三十分が経過している。

「……話は一段落ついたか?俺、昼飯食ってないからさ、そろそろお暇しようと思うんだけど」

「ええっ?」「ええっ?」「えー」「えー」「え」

 俺が話を振ると、同じような声が俺以外から上がった。

「え、有田もかよ?昼飯食ってないのに?」

「私まだ帰りたくなーい」
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