かけらことばのおんなのこ

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「はい何でしょう、有田さん」

「…えーっと、まずどっちですか?」

「有田…、座ってる位置で覚えようぜ。そっちは映だ」

「ぶっぶー、外れぇ。僕は壹」

「は?」

「…そんな端から疑わないでよ。嘘だよ、君の言う通り彼が映。壹は僕」

「だろ?」

「それで、質問は何?」

 映の一言に、有田ははっと我に返り、

「そうそう、想って誰さん?」

 そう質問。
 すると、有田以外の全員が首を傾げ、

「“そうそうそう”?」

 異口同音に言った。

「え、いや…“そうそう!――想って誰さん?”って聞いたのっ」

 壹がイチだけに、いち早く反応して、

「ああ、想ってね、店員の一人で、この土地の所有者。この店の変なルールもあの子が考えたし、僕らはあの子に招待されて、雇われてるよ」

「へえ…」

 有田が納得したところで、今度は俺が疑問を抱いた。

「想に、招待された?」

「ああ、知らない?」

「ここで働くためには、まず想に“招待”されなきゃいけない」

「そしたら、このお店のルールを聞いて、それでもやるかどうか聞かれる」

「それをオッケーしたら、担当の曜日が言い渡されて、おしまい」

「晴れて僕らは、」

「店員さ!」

 俺はしばらく何も言えなかった。

「…てか、双子くん。なんで交互に喋んの?」

「なんとなくぅ」

「前に読んだ小説に出てきた双子の真似っこー」

「…ふうん」

 俺が黙っている間に、有田が壹と映とそんな会話。
 俺はようやく頭の整理がついた。

「つうことは、あれだ?あんたらもノッカさんもマークも、みんな想に“招待”されてんだ?」
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