かけらことばのおんなのこ
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「えー、なになにー?紗綾さんって誰?教えて映くーん」
「ん?泰ちゃんの意中の人っ」
「……西間、いちゅーって、なんだ?」
「教えない」
「なんだよっケチんぼ!」
「べー」
「もういいよ。帰ったら辞書引くから」
この程度で辞書っ?
俺がショックに硬直していると、今度は椎菜がくすくす笑い出した。
「仲良いね。彼氏羨ましいなあ」
「ん、人にもよるよ?」
「有田お前どういう意味だ。それを言ったらお前だって、彼女の割に可愛げないぞ」
「なっ、西間って奴はどこまでデリカシーないのっ」
「そっちこそ――」
「大体あんたは――」
ぎゃーぎゃー。
俺たちが言い合っていたら、ふと椎菜が声を上げた。
「あ、ねえ慶太クンって名字、西間なんだよね」
「あ?お、おう」
「もしかして――、声優のにしま順子と関係あったりする?」
え。
「あああああっ!そうだよ、あるのっ?」
椎菜の言葉に桃花が猛烈に反応。
「え、えっと……」
実はあんまり、そういう事実を口外したくない。
母にそう言って口止めされてるのもあるし、俺自身小さいときに母が声優だと言いふらして、そのネームバリューで人気になっちゃって、挙句週刊誌の記者に追い回されたトラウマもあるのだ。
出来る友達も、俺狙いか母狙いか分かんなくなるときもある。
基本的に周りが信用できなくなる。
だから、このときも俺は嘘をつくことに決めた。
決めたのにさ――、
「ああ、順子さん、西間のお母さんだよ」
有田が喋っちゃったんだよね。
双子ちゃんはそれを聞くと、爆発した。
「えええええええええっ!本当っ?本当にっ?すごい!すっごいそれ!信じられない!アンビリーバボー!」
「まじでまじで!やっぱり?うわ、どうしよう!緊張するっ!」