かけらことばのおんなのこ
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やがてマークが小さくため息をついた。
「マア、オレには関係ないカラ、どうでもいいケドナ。お前にはガッカリしたゾ。有田がお前よりやまとが良いって言うのも無理ないゼ」
マークにそんな風に言われるなんて。
よりによってこんなふざけた奴に――、ん?
そこでようやく、俺は気づいた。
「なあ。“やまと”って、誰だ?」
マークが先程から何度か口にしている、聞いたことのない名前に。
俺の問いに、マークは驚いたような顔をして、そしてあっさりとその言葉を口にした。
「何だお前知らないのカ? 有田と一緒に写ってる男のことダ」
俺は慌ててマークの手からプリクラをもぎ取り、極限まで顔を寄せてプリクラ男を睨みつけた。
プリクラの加工機能のせいでどこまでが実物の顔なのか分からないが、優しそうな、紳士的な雰囲気の漂う好青年だった。
こちらに向かって、柔らかな笑みを浮かべている。
「こいつ、やまとっていうのか」
マークが頷くのを脇目に入れて、俺は続ける。
「どこの誰だ」
「……お前、本当に何も知らないんだナ」
「ああそうだよ。だから教えてくれ。頼む」
――腹いせでこの土曜日に来ただけなのに、思わぬ収穫だな。マークに感謝しないと。あと涼太にもか。
そんな事をうっすらと考えていた俺の耳に、マークのやけにあっさりした声音が飛び込んできた。
「やまとは、月曜の店員ダゾ」
そんな訳で月曜日の夜。
例によって、俺は店の前に来ていた。
店には特別目立った装飾もなくシンプルであり、入口のすぐ上に“らんぷ亭”と銘打たれた看板が打ち付けられている他は、店らしい所が何もない。
――やまとは月曜の夜にバーをやってる正真正銘うちの店員ダ。クールでなかなかモテるヤツだナ。この店の女店員もだいぶ気に入ってるみたいダゼ。チェ。
マークの言葉を思い出す。
――ちなみにオレに言わせれば、少しばかりキザというか、余裕そうな感じがして苦手なヤツだ。