■はじめてのおつかい?■


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小さな二匹は、小さなおててを繋ぎながら、急いで外に出ました。
はやくしないと、メタルが壊れてしまいます。
小さな二匹は、クイックが書いてくれた地図を開くと、一緒に眺めました。
それは流石クイックが書いただけあって、読解不能な古代文字のようなモノとみみずがのたくったような奇妙な絵が書いている、地図とは言えない代物でした。
こんな地図で、おじいちゃんのところに行けるわけがありません。
ちびメタルは困ったように、小さな兎さんのお耳を垂れ下げてしまいました。

「……こんなのよめないよ」

でも、きっとこれがクイックの限界なのです。お馬鹿ちゃんな彼にそれ以上のことは期待出来ません。
なんとか読解しようとしますが、聡明なちびメタルにはその地図はこどもの落書き以下にしか見えませんでした。

「めたる、みぎだよ」

一緒に地図を眺めていたちびクイックが、小さな尻尾を振りながら言いました。

「えっ、なんでわかるの、くいっく?これがよめるの?」

「よめるよ?なんで?めたるは頭がいいのに、こんなかんたんなのがよめないの?おかしいねー」



流石、お馬鹿ちゃんなちびクイックです。
お馬鹿ちゃんの書いた地図は、お馬鹿ちゃんにしか理解できないようでした。
ちびクイックは、ちびメタルのおててを引っ張って、勢いよく右の道へと走り出しました。

「はやくとうちゃんをたすけなきゃ!」

「え、まってはやすぎるぅぅぅぅぅ!」

小さくても、ちびクイックはとてもはやいのです。
常人ではとらえきれないくらいのスピードで急に走り出したので、引っ張られたちびメタルは、目が回ってしまいました。




*****



「すとっぷ、すとっぷーーーーーー!」

「え、なぁに、めたる。いそがないと、とうちゃんがおかしくなっちゃうよ……いつもおかしいけど、いろんないみで」

15分くらい、超速で走ったでしょうか。
ほぼ引きずられていた状態のちびメタルは、泣きそうな声で叫びました。

「くいっく、ちゃんと地図をみてはしってるの?ここ、どこ?」

「あ」

なんということでしょう。
お馬鹿ちゃんなちびクイックは、地図を見るのも忘れ、ただがむしゃらに、走り続けていたのです。
ちびクイックは辺りを見渡し、持っていた地図と見比べました。
うっそうとした森のなか、目の前には大きな大きなかしの木が一本立っていました。
辺りは静寂につつまれ、ふくろうの鳴き声すらしません。時折、風の通って行くひゅうひゅうという音が不気味に響いてきます。
ちびクイックは、地図を眺めました。……ダメです。
どこかで道が外れてしまったようで、ここのことは地図には書いていませんでした。
ちびクイックは、猫さんのお耳を、不安げにぴこぴこと動かすと、小さな尻尾をだらりと下げてしまいました。
どうやら迷子になってしまったようです。

「うえ〜ん、どうしよう、めたる〜!おれたちのとうちゃんがこわれちゃうよ、うえ〜ん!」

「なかないで、くいっく。いまきた道をもどろうよ。【いそがばまわれ】っておとうさんが言ってたよ」

「磯のガバが回るの?磯にいるガバさんってだぁれ?なんで回るの?」

「……くいっく、いみわかんない」

お馬鹿ちゃんなちびクイックの発想は、聡明なちびメタルには理解できませんでした。
小さな二匹が引き返そうとしたその時です。

「ぎゃあああああああ助けてくれえええええ!」

可哀相なくらい上擦った大人の悲鳴が、森の奥から聞こえてきます。
小さな二匹はびっくりして、互いに抱き着いてぶるぶる震えていました。






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