海賊

□新世界へ!
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「……二年、たった」



あの頂上戦争から二年。

麦わらの一味は行方不明。

白ひげ海賊団は相変わらずに海を守る。

だが、そこには二番隊と零番隊の隊長の姿はない。

彼らが助けようとした
千寿千尋。
彼らは彼女に二年前、
守られた。

その代償に、
彼女は行方を眩ませた。

「……僕も、行かなくちゃ」

高い高い塔の上。

紅い髪の少女は姿を消した。















―――

























ここは女ヶ島から北西の無人島。
「ルスカイナ」


「おいエースっ!
行くぞぉ!出航だって!」

「おう!」

朱色のシャツを羽織ながら、
エースは弟、ルフィの言葉に返事をした。

頂上戦争から二年。

その間、ルフィとエースはそれぞれレイリーと白ひげに修行をつけてもらい、
メキメキと実力を付けた。

今日は一味が終結する日。

「じゃあルフィ。
俺もしばらくお前らと同行するが、大丈夫か?」

「ああ!
俺も千尋を探したいしな!」

ぐるぐると腕を回しつつ、
ルフィが答える。

と、そこに。

「ルフィ、エース。
そろそろ船に乗り込むのじゃ。
……勿論、ルフィの好物はすべて船に積み込んでおる。
そんな気の利くわらわは
そなたの良い妻となると思うぞ?ルフィ」

「結婚はしねえ!
食いモンありがとう!」

「はあ……っ。
そんな辛辣なそなたも慕わしい……」

「ルフィ、結婚はしといた方がいいと思うが」

「エースが結婚したらな」

にんまりと黒い笑みでいう弟に、
どうして二年でこうなったというように
エースは手で頭を押さえた。

ルフィは木に被せておいた麦わら帽子を掴んで頭に乗せつつ呟いた。

「よし、行くか!」



























―――






















シャボンディ諸島で海賊たちが呟くのは
「麦わらの一味が仲間を集め、新世界へ突入する」ということ。

仲間募集と書かれた紙を見ている黒いコートで全身を隠し、
フードで顔半分を隠した人間。

女物のヒールを履いているので、
辛うじて女だということは分かる。

興味ないというようにその場から立ち去ろうとする。

と、何かの人影に当たる。

その影はどうやら女で、
痛みきった赤錆の髪を持っていた。

「何ぶつかってる!
私が誰だかわからないのか?!」

女はフードを被った女に一枚の手配書を見せつけ言う。

「私は懸賞金十億六千万ベリーの『紅い死神』千寿千尋よ!」

興味ないのか女はそのまま立ち去ろうとした。

しかし、千尋を名乗る女にフードを捕まれ、
それは叶わなかった。

代わりに、フードが取れ、
顔が露になる。

髪は千尋を名乗る女の痛みきった髪など比べ物にならないような美しい紅。

髪の一部を黒いリボンで結わいている。

長さは肩にかかるか、かからないかの長さ。

顔もとても整った顔立ち。

絶世の美女というべき顔だが、
顔の左半分を覆うような火傷の後が目をひく。

しかし、そんな傷さえ彼女のよさを引き立てるものとなっていた。

顔の傷と髪の長さが変わったものの、

この顔は。

「ほ、本物……?!」

「……黙れ、僕は忙しいんだ」

そして目に見えない何かにより、

偽物は真っ赤な血飛沫を撒き散らし、絶命した。

一瞬のことで何もわからなかった住人たちは慌てて紅い死神の姿を探すが、
そこには不気味な静寂と血の匂いが残るだけだった―――。















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