海賊

□こんにちは異世界
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そのまま頭を下げる。

あー、通じるかな私の思い……!

「グララララッ!」

聞こえた笑い声。

「顔を上げろ。
……可愛い俺の娘よ!」

やった……!

急いで顔をあげれば
大きな手を差し出す白ひげ。

思わず、涙が零れた。

ここにトリップして一年。

父親にも母親にも逢えず、

海軍や海賊に追われる日々。

家族の愛に、温かみに、

無くして初めて気付いた。

だからこそ。

見ず知らずのこんな私を受け入れてくれるこの人に。

「…年はいくつだ?」

「……十四」

泣きながら答える。

体からしてこれぐらいだ。

差しのべてくれた手を今度は私の頭に置いて、
撫でながら白ひげは言った。

「その年で親も居ずに賞金首か……。
もう平気だ、ここにはお前を妹と慕ってくれる俺の息子たちが沢山いる」

ただ、ただ頷くことしか出来ない私。

白ひげはまた笑った。

「ありがとう、ごさいます……!」

「俺はお前の親父だ!
敬語はいらん!
グララララ!」

「……お父さん、ありがとう!」














―――
















「さっきはすいませんでした」

ちゃんとマルコさんに謝りに行く。

するとマルコさんは笑って、

「いやいや、
こっちこそすまねえよい」

「おめぇら何謝りあいしてんだ!
今日は宴だあああ!!」

























そして、二年―――





















「おーい千尋!!」

「なーにー?」

「お前が気にしてた火拳のエース!
ジンベエさんと戦ってるぞ!!」

「え?!嘘?!」

せんきゅーボブ!!←

ようし、

いっちょ行くか!

……って。

そうだ、お父さんがでるまで待たなきゃ……。

「はあ……」



















そして―――












「エース、船に乗ったの?お父さん」

「あぁ。
今は船室に閉じ込めてる」

酒を煽りながらお父さんが船室の場所を教えてくれた。

「ありがと!」

そのまま船室へと走り、
扉を叩いた。


















―――


























くそっ……!

仲間たちは、皆無事なのか…?

俺のせいで皆まで危険な目に遇わせちまった……!

白ひげっ、アイツさえ殺せば……。

コンコンッ

……誰だ?

白ひげのクルーか?

「……入るね」

ドア越しに聞こえたのは澄んだテノールの音。

扉が開き、入ってきたのは女だった。

紅い流れるような髪。
それを黒いリボンで少しだけ結わき、残りは流している。

瞳はどんな宝石よりも輝く金色で、

肌は陶器のように白いのに、
頬は赤く色付いている。

鼻はすっきりと通り、
唇は熟れた果実の様に赤い。

細い手足を薄いレースのような服に包み、
下に着ている黒い服や、腹が見えている。

手首は黒いレースで縛ってあり、紅い薔薇が白と黒の中に映えていた。

胸元にも紅い薔薇がついていて、黄色い紐で背中で縛られていた。

やばい、可愛い。

……はっ!

こいつは敵だっ、白ひげの仲間だっ……!

俺は隠し持っていたナイフを握りしめた。

女はそのまま近付いてきて、
そのまま俺を抱き締めた。

「っ?!
な、何しやがるっ!!」

俺は勢いで女の胸にナイフを突き付け、言った。


「これ以上近づいたら……!
刺すぞっ!!」

それでも女は顔色変えず俺を抱き締めた。

刃が胸を貫いているのにも関わらず。

真っ赤な血が
俺の手やベッドのシーツ、
女の白い服を汚していく。

「お、おま……!
なんで…」

「君はロジャーの息子に生まれてよかった?」

「っ?!」

なんで、知ってる。

「……、ねえ。
こう考えてみようよ」

女は話し始めた。

「確かに君はロジャーの子供だ。
でも、それがなんだ」

「!」

「君はこの世に生を受けたから皆に会えた」

「君はここに生まれたから父と呼び慕えと言ってくれる人に出会えた。
君を本当の兄弟のように慕う人たちに出会えたんだよ?
君は皆に、必要とされてるんだよ?」

……。

…………。

そうだ、これだ。

「たった独りに、させやしない」

これが、欲しかった。

女の胸からナイフを抜いて、そのまますがり付いた。

「溜め込んじゃ駄目だよ?
人間はみんな誰かに頼って生きてくんだから」

涙が止まらなかった。
女の前でみっともないと思う。

でも、止められなかった。
























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