好きしょ【空色の花】

□水空小説
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「だから…お前は、兄ちゃんと水都は別人だと思ってただろ?」
「…で、オレが兄ちゃんじゃない人を好きになったと思った…?」
真一朗は、すっと目をそらして小さく頷いた。
その様子を見た空は、思わず…
「…ぷっ」
遠慮なく吹き出してしまった。
そして、こう続けた。
「水都も兄ちゃんの一部なんだから…嫌いになるわけないじゃん。…オレは、水都を兄ちゃんと別人だとは思ってない…」
「…空」
はっきりと伝えられる空の言葉に、真一朗は泣きたいぐらい感激した。
「さんきゅ、空…」
素早い仕種で抱き寄せられて空は、
「わ…っ、に、兄ちゃ…」
焦って逃れようとしたが、
ふと表情を柔らかくして、自分も真一朗にしがみついた。
「礼なんていいって…」
それよりも、勘違いさせてしまった自分の言動について、謝りたかった。
…しかし真一朗は、空を強く抱きしめたまま、なかなか解放してはくれなかった。
そしてじっとしていると…
「……ん…?」
黙っていた真一朗の手が、すっと空の尻を撫でた。
「え…っ、に、兄ちゃん…っ!?」
本気で拒否するほど嫌ではなかったものの、
一旦落ち着いたはずのこの雰囲気で、今からここでするのもなぁ…と、空は頭を悩ませた。
「んだよ。空が誘ったんだろ…?」
その間にも、真一朗は空の尻を撫で回し…
「…ぅわ…っ」
さりげなく、自然に、服の中に手を忍ばせてきた。
「…なぁ、空…?」
深い色の、
優しい瞳に見つめられて。

「…仕方ないなぁ…」
聞き分けのない子供を相手にしているかのように、空は小さな溜め息をついた。
そして、恋人の首に腕をまわす。
「兄ちゃん飢えてんだもんな」
クスッと笑うと、同じように、真一朗も笑みを浮かべた。
「そ。空ごときの、甘〜いわかりやす〜いワナにかかっちまうぐらいな」
そして二人で、思わず吹き出す。

しばらく笑った後、
ふいに空をぎゅっと抱きしめて、真一朗が耳元で囁いた。

「…空。…愛してる」

「…ん」

その唇にキスを返すことで、空は、真一朗の言葉を胸に受け入れた。
「兄ちゃんじゃなきゃ、オレも、ヤだから…」


二人の「好き」が、今日また、鮮明なものへと成長した気がした。


甘いワナによって。

End



―「迷路と罠」あとがき―
これも、いつ頃書いたものか忘れました;多分3、4年前??
普段真空ばかり妄想してる私ですが、ふと「同一人物だからドッキリできんじゃん」と思ったのがきっかけだったような。
兄ちゃんが実は繊細で健気だというのが、私の中にある設定なので、それを前面に出してみました。
タイトルは、なんとなく頭に浮かんだものを。先に「水空にしよう」というのを決めていたので(リクもらってたハズ)、「罠」というあやしげな単語が先に出てきたのを覚えています(笑)。結局そんなコワイもんじゃなくて、空のかわいらしいものに終わりましたけど。
これも、手を加えてます。
それにしても、今回はタイトルと内容がうまく絡んだと思う。
前回の失敗が効いていたんだろうなぁ(笑)。

2006.12.16
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