好きしょ【空色の花】

□水空小説
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小さく身体を震わせる空は、この後どういう目にあわされるのかを、充分悟っていた。
軽くソファに押し倒すと、真一朗は、迷わずその上から覆いかぶさり、肩を押さえ付けた。
そして、顔を近づけ、耳元で囁く。
「…ふふ。怯える顔もそそる…」
「……っ!!」
顔を強張らせ、身体をビクッと震わせる。
「や…めろよ、兄ちゃ…」
「誰に言ってるんだ?羽柴…」
「…くっ…」
躊躇なく制服を脱がせにかかると、空は足をバタバタとさせ、真一朗を遠ざけようと、暴れ出した。
「…イヤだ…っ、ヤだ…!水都っ!」
必死で逃れようとする空は、目に涙さえ浮かべていた。
(う…)
水都であれば躊躇することはなかったのだろうが、さすがに、空の涙は真一朗には痛い。
「…泣くな…」
真一朗は、優しい仕草でそっと、今にも零れ落ちそうな涙を指で拭った。
「み…な…」
大きな目を更に見開き、空が真一朗を見つめる。
真一朗は、正体をバラしてしまいたくなるのをなんとか抑えると、今度は空の顎を掴み、上向かせると同時に、唇を重ねた。
「ん…っ…」
唇を塞がれたまま、空が小さく声をもらす。
が、身体はもう逃れようとはしていない。ぐったりとソファに身を委ね、まるで…
(…もしかして、シテもいいって…?)
つい、そんなふうに思ってしまった。
「随分と大人しいじゃないか…?」
顔を近づけたまま囁くと、僅かに眉を動かしたが、それ以外の反応は返してこない。

…おかしい。
恋人となってからも、水都に攻められると必死になって逃げまくっていた空が、こんなに無抵抗でいるとは。
(…もしかして、油断させといて逃げる作戦か?…そうはいくか)
決して油断はせずに、真一朗は、空の上着をゆっくりと剥いでいく。
白く滑らかな素肌が、真一朗の平常心をどんどん乱していった。
ところどころに、昨夜自分がつけた紅い痣が残っていたが、それもまた、真一朗の気持ちをたかぶらせる。
それを覆うように上からそっと口づけ、舌を這わせた。
「ん…はぁ…っ…」
抵抗もしないかわりに、空は、抑えることもなく甘い声を零し出した。
「…っ、……羽柴…」
あまりの反応のよさに、真一朗はうっかり空の名を呼びそうになり、
…慌てて言い直した。
(…やべ…)
このまま勢いに任せて、本性をさらけ出し、真一朗として空を抱きたいと思う。
しかし、どうも空の抵抗のなさが気になる…。
そう思ってじっと考え込んでいると、
「…水都…?」
空が真一朗の顔をうかがうように見つめてきた。
…そう、まるで、誘うかのように。
「…そうか、羽柴は、こっちの方がよかったんだったな…」
余計な考えを頭の端へ追いやると、ニヤリと笑みを浮かべた真一朗は、手早く空の下半身をあらわにしてしまい、そして、僅かに立ちあがる空自身を緩く握りこんだ。
手の中にそのぬくもりを感じると同時に、
「んぁ……っ」
空の、鼻にかかったような甘い声が耳に届く。
「…気持ち良いだろう?」
「ゃ…っ、ん…」
言葉では僅かな抵抗を示しつつも、空は頬を真っ赤にして身をよじる。
「ではなぜそんな声が出る?」
「……っ…」
感じてしまう身体だけは、抑えることができない。
それに納得がいかないように、空はやはり悔しそうな表情を見せた。
「イヤ…だ…っ」
「…往生際が悪いな」
冷たく言い放つと、真一朗は、手にしたそれにそっと口づけた。
途端に空は身体をビクッと反応させ、
「ぁああ…っ、ん…っ!」
一段と甘い声を零した。
真一朗は、一瞬空の顔に視線を向けたが、すぐまた目をそらせ、捕えたばかりの果実に舌を這わせる。
味わうようにねっとりと舐め上げる度に、快感に身体を震わせ、とろけるような表情を見せてくれる。
ベッド意外の、例えばバスルームやキッチンですることを、とても恥ずかしがるのが空だ。
水都のプライベートルームといえなくもないこの場所も、結局は学校だ。
そのため、いつ他人がくるかわからない緊張感も手伝って、空はいつも以上に敏感になっているようだった。
「や、ぁ…っ、水都…」
すっかり身体から力が抜け切った空は、ソファにぐったりと身を預けながらも、
足だけは快感に耐えるように、しっかりと力が入っている。
「フ…どうだ、こんな明るい場所で、こんなに恥ずかしい恰好をさらけ出す気分は?」
真一朗は、一旦口を離すと、わざとそれに息がかかる距離で、囁いた。
唇を噛み締め、空は水都を睨みつける。
頬を赤く染めて。
目の前にいるのが、真一朗だとも気付かずに。
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