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□只今取り込み中
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山積みにされた書類の山や度々掛かって来る電話に焦りを覚えながら、ルートヴィッヒは筆を走らせていた。
フェリシアーノと出会うまでは、仕事に追われることなど殆ど無いに等しかった。
上司から任せられた仕事を溜めないよう毎日考えてスケジュールを立てていたし、健康管理にも気を付け日々健康的な毎日を送っていたが、全てはフェリシアーノと出会ってから何もかも変わってしまった。
毎日毎日ルートルートと懐いてくるフェリシアーノを甘やかし、仕事があるからと言えば次の日にまとめてやれば大丈夫、と丸め込まれ気付けばこの様。
溜まりに溜まった仕事がルートヴィッヒに降りかかってきてしまった。

「はぁ・・・全く、終わりが見えんな」

頭をがりがりと掻きながら、左右に積まれた紙切れを眺める。
書類を書き続けて痺れてきてしまった手を休めようと暫し筆を置き、冷め切ったコーヒーを一気に飲み干す。
からりと晴れた窓の外を見て溜め息を吐くと、再び筆を握る・・・が、その瞬間、ばたばたと廊下を走る音が段々こちらに近付いてくるのに気付いた。
何度も聞いたことのある足音だ。

「ルート!今日はケーキを作ってみましたぁ!紅茶付きだよぉ〜」

ルートヴィッヒの忙しさもお構いなく、本日も騒々しくやってきたのはフェリシアーノ。
片手で思い切りドアを開け放ち、もう片手にはトレイに乗った二人分のケーキと紅茶があった。

「あー、そこのテーブルに置いておいてくれ。それと、今は仕事中だ、静かにするように」

机に向かい、筆を進めながらもぴしゃりと言い放ち作業をする姿は正直立派だが、フェリシアーノは当然つまらなさそうな顔で溜め息を吐いた。
ルートヴィッヒに言われた通りに軽食をするために置かれた小さなテーブルに、持ってきたものを静かに置く。
紅茶はつい先程淹れたばかりで湯気が立っていたが、ルートヴィッヒの仕事が片付く頃には冷めてしまうだろう。

「あ、あとさ、ちゃんと戸締りしておかないと大変だよ?玄関の鍵、開いててびっくりしちゃった」

フェリシアーノは一人紅茶を啜りながらそう言うと、あぁ、と素っ気無い答えが返ってくるだけだった。

「お菓子は手が汚れるから駄目でも、紅茶なら飲めるよね。ここに置いておくから・・・」

書類で埋め尽くされた机の空いたスペースに、紅茶の入ったカップを置いた。
今日だけは邪魔をしないように、と言われていたので抱きつきたい気持ちを抑えて後ろのソファーに倒れこんだ。

こんなに、すぐ傍にいるのに。

いつもの癖を治すのは難しいもので、駄目だと言われるものなら尚更だった。
普段なら抱きついても、少し怒られるだけで抱き返してくれたりもするが今日は本当に何も無い。
終わったら、それまで我慢した分をルートヴィッヒに請求してやろう。
そう自分に言い聞かせて我慢するしか無かった。
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