Novel

□愛情の裏返し
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けたたましく鳴り響く目覚まし時計
夢から現実へと引き戻された、そんな朝
久しぶりに見たのはセンパイとの思い出。
過去形にしたらなんだか死んでいるみたいだけれど残念ながら健在です
いっそのこと死んでくれれば、この気持ちから開放されるのではないかと馬鹿なことを仕掛けたが全部残念な結果で終わっている
目覚めがいいのか悪いのか。
はっきりと覚めない頭でも習慣は抜けないようでいつもの様に身支度を始める
用意が出来て最後に重たい重たいカエルを被る。

「あ・・・」

手に取った瞬間先程見ていたものが巻き戻しされて頭に流れる
夢がいつまでも記憶に残るなんておかしな話だ
それも、やっぱりセンパイの夢だからなんですかねー?



気持ちが片寄っていた。
スキとキライの半分で行ったり来たりを繰り返していた頃だ
“スキ”という底なし沼に半分足が浸かっていて、ずるずると後戻りが出来ないこの気持ち
きっかけはセンパイの行動で、今考えたら本当意味の分からないところで沼にずり落ちたよなと思う。

「お前は俺が許すまで一生それ被っとけよ?」
「・・・・・・・はー?」

わざとらしく首をかしげて挑発してみるもののよほど機嫌がいいのかいつものようにナイフは投げてこなかった
手渡されたのは黒いカエルの被り物
中には無線まで内蔵されているから意外と高性能だ

「わざわざ王子が特注で頼んでやったんだしちゃんと被れよ!」
「これ、ミー・・・・にですかー?」
「あたり前じゃん」

トクンと胸が高鳴った
スキな人から何かを貰うということはとても嬉しいこと
嗚呼。自分はこの人がスキなんだ・・・そう自覚せざるをえなかった。
思えば思うほど動悸は激しくなって顔が熱くなった

「仕方ないから、貰ってやりますよー・・・・」
「しししっこれでちゃんとマーモンの代わりってわけ」
「マー、モン・・・・?」

グサリと突き刺さる音が聞こえた気がした
どうせ前任の代わりでしかない。
センパイが求めているのはマーモンって人なんですよ
それでも思いは変わることなく今に至るわけで。

「無理なのくらい分かってるつもりなんですけどねー・・・・」

ため息をついてカエルを被ったそんな時

「しししっ独り言かよカエル」
「な、センパイ・・・勝手に部屋に入ってこないでくださーい」

ポーカーフェイスを無理矢理保ち震えそうな声で反論をしてみた
驚いた・・・・急に入ってくるんですからー

「人が考え事してるときくらいそっとしといてくださいよー」
「カエルが考え事とかありえねー」
「あーウザ」
「カッチーン。お前朝っぱらから王子に喧嘩売るわけ?」
「そうですけど何かー」
「死ねカエル!」
「ゲロッ」

こんなやり取りがミーはスキ。
だってセンパイは構ってくれるんですから
幼稚だって思われたってガキだって思われたって
センパイがミーを見てくれるならそれでいいんですー
なんて思ってる自分って相当惚れてますよねー?
今日もセンパイのナイフは──

「痛いですー」


(いつかこの気持ちを伝えられたら)

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