Novel

□白い花が紅く染まるとき
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コンコンと大きな扉を軽くノックするいい音が響いた
はーいと、声が聞こえたので中に入れば書類が山積みになった机の前に小さな頭が見えていた

「綱吉。言っていた茶葉持って来ましたよ」
「あ、骸!ありがとう」

一言返せばすぐまた作業に戻ってしまった
せっせとろくに目も通していない書類にサインだけを書き込んでいく

「前から思ってたんですけど、見てない中に変なものが混ざっていたらどうするんですか?」
「隼人が一度読んでから積んでるからそれは無いと思うよ」

獄寺隼人・・・やりますね
しばらく経っても一向に減らない書類。
せっかく紅茶を持って来たというのに・・・

「綱吉くーん・・・・つーなよーしーくーん・・・・・・・・・つーn「ウザイよ。骸」

しゅんと頭の房がうなだれた

「ぷ・・・」
「なんですか?人の顔を見て笑うなんて」
「実際は顔じゃなくて頭かも・・・」

お腹を押さえて必死に笑いに耐えている彼はどこか吹っ切れた顔をしていた

「することが無くて暇ですね」
「骸だけだよ」

じとーと、した視線で見つめてみても笑いから解放された綱吉は見向きもしない

「すこし気分転換でもしたらどうですか?」
「え?・・・そんなヒマないよ」

チラッと時計を見て冷や汗をかいていたがそんなの関係ない
今まですっと僕を待たせていたのだから
無理矢理腕を引っ張って大きな庭園に出た


乗り気じゃないのになぜ連れ出したのだろう。



もしかしたら・・・綱吉は、




書類のこともすっかり忘れて無邪気にバラを眺めていた
眺めていたバラの中に不思議な柄のしたものがあった
もともとあったものに上から絵の具をぶちまけたような・・・
例えるなら、バラのとげで指が大量に出血してそれが零れたような・・・

「綱吉!!バラの上に血が!!」
「え?」

きょとんとした顔で振り向いた。
それが、彼の残した最後の元気だったときの表情
振り向いた瞬間銃口が向けられた
音が響いた瞬間がどれだけ長く感じれただろう


白いバラの上に、今──

     彼の血が零れ落ちた。


(悔やんでも、もう全て過去のこと)

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