時を越えて花束をおくる

□馬鹿
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虚ろに揺らぐ瞳には涙の膜がはっている
赤く染まった頬に汗で張り付いた翠色の髪の毛
水分を失い少しカサついた唇から弱々しく言葉が発せられる。

「沢、田・・・綱吉・・・」

朝は全然こんな様子じゃなかったのに・・・!
何で俺は気づかなかったんだろう
辛そうな顔をして定まらない視線を、必死に合わせようと努力した

「獄寺くん!!フランを俺のベットに運ぶから手伝って!」
「はっはい!!」
「俺は氷取ってくんな?」
「ありがとう山本っ」

いっせーのーでっ!
俺は肩を、獄寺くんは足を持ち上げる
なるべく振動が伝わらないようにそっとベットに下ろした
時折呻くような声を上げるフランを俺達は見守ることしか出来なかった
一体何が彼の身体に起こってるのかなんて見当もつかない

「リボーン。お前も分かんないの?」
「さっぱりだな」
「小僧にも見当がつかねぇのかよ」

その場に居た全員の胸に靄がかかる
何も出来ない。
何もしてあげられない。
何も分からない。
何をしたらいいのか、分からない
無意識のうちに獄寺は貧乏ゆすりをしていた
自分の無力さに苛立ちを募らせ険しい顔をして立ち上がった

「俺、シャマル探してきます!」
「えっ!?でもシャマルは女しか・・・」

ピタリと動きが止まる
ちょ、まさか獄寺くん・・・・

「忘れてた?」

顔を真っ赤にして勢いよく座り込んだ
なんだかちょっとおかしくて込み上げてくる笑いを必死に堪えた
いや、違うんです!!なんて言ってる姿を見てまた盛大に噴出した
その笑い声にまぎれてぽつりと聞こえてきた呟き
掻き消されずにはっきりと届いた。

「何でですかー・・・」

静かに響くその声に全員は耳を傾ける

「会ってそんなに、経たない知らないやつに・・・・・何でそこまでするんですか?何で、」

「そんなの決まってるよ!!!」
「ケッ、10代目は寛大なお方なんだっ」
「そうそう。そうなのなー!」

利益とか、メリットとか、下心とか。
汚い世界しか見てこなかったフランには分からなかった

「困ってる人は、ほっとけないから!」

差し向けられた裏の無い笑顔。
子供のときからこの人たちはこうなんだ・・・・

「そんなの、ただの馬鹿ですー」

(捻くれてるなんて分かってる)
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