時を越えて花束をおくる

□お子様
1ページ/1ページ

あーあー、マフィアのボスといってもまだまだ子供。
やっぱりガキってわけですねー。
自分の解けない問題を、どうしても解けなかったものを
いとも簡単に解いてみせる他人を羨み、疎む気持ち。
そんな感情を本人に分かるくらい表している、それも無意識のうちに。

「なに拗ねてんですかー」
「別に拗ねてなんかないよ」

その態度が拗ねてるっていうんですよー、お子様。
こんなことを言ってるのをあの堕王子が見ていたら、きっと「お前もな」
なんてむかつく言葉とナイフが一緒に飛んできていただろう。
だが、誰も言わないし、飛んでも来ない。
それが嬉しくて余計にいじると、まだ若いボスは返事もしてくれなくなった。
頑張って大股で歩いて、無意味に足を速めて、でも決して走らない。
微妙な速度で数歩前を行く彼の横に小走りで並べば、露骨に嫌な顔。

「解けないことがそんなに嫌なら、解けるようになればいいじゃないですかー」

図星をつかれて見開く目、大げさに跳ねた小さな肩。
堂々とした態度でいつ見ても凛々しい表情をしていたボンゴレとは大違い。
ミーの知っていたボスが10年でこれほどまでに変わるとは。
人は皆、日々成長するのだからあたり前といわれればそれまでだけれども。

「無理、」
「どうしてですかー?」
「何回やっても皆のように分からない。
 俺には無理だって分かってるから、もう諦めてるんだ」
「解説でも見たら解き方なんていくらでも─」
「俺の分からないところはすっ飛ばして書いてある!!」
「人に聞けば、」
「こんなところから分からないのか?って、また」

馬 鹿 に さ れ て し ま う ん だ 。

馬鹿なのは知ってる。
でもそれを他人に指摘されると何故かむかつく。
馬鹿には馬鹿なりのプライドがあってへし折るのが恐い。

「少なくともミーは馬鹿になんかしませんよ」
「え?」
「だって、あのボンゴレになるんですからー」

やれば出来る人なんだ、まだ芽を出していないだけ。
種はあるんだ、だれも水をくれなかっただけ。
だからミーが肥料をまいて、他の人が水をまけばいい。
立派なボスに成長していく姿を見れるなんて結構いい経験。

「へっぽこなボスに仕えるのは癪に障るから
 ミーが立派なボスにしてあげますよー」
「意味わかんないぞ!」

(さっきのふて腐れた顔が笑顔になった。)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ