時を越えて花束をおくる

□問題
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教科書を真ん中においてひっついた机
他の人より縮まる隣との距離感
窓枠に広がる青がいつもより澄み渡って見えた
空とは違う靄のかかった胸の辺りがヒヤヒヤする感覚
あぁ、あの気持ちに似てるんだ。

授業参観に母さんが来るあの感じに

黒板を移して示された問題を解こうとしても一向に先が埋まらない
数字と文字の羅列にクラッとする
先生に当てられたらどうしよう・・・
参観日はいつもそうだった
答えられないし恥ずかしいし母さんは無駄に期待するし。
なるべく顔を俯かせて教師と顔を合せないようにしてた
そんな心情がこれから毎日続くのかもしれない
隣に座っているのが母さんよりもたちの悪い毒舌カエルだなんて
今だって痛いほどノートに視線がいってるのが分かる
きっと振り向けば人を小馬鹿にした顔だろう

こーんな問題も解けないんですかー?って

そう思ってるに違いない
絶対に、あ・・・・
パキッとシャーペンの芯が折れて机の下へと先が転がっていった
それは大して気にしてないけど、視線を黒板から逸らし
見ないようにしていたフランを見てしまった
自分はどうやら相当自意識過剰なようだ
机の上で爆睡している隣に拍子抜けした。
そりゃ、人のノートなんていちいち見ないよな
普通はさ。
はぁ、と息をついたとき答えが真っ白なままで当てられた

「なんだ沢田。こんなのも解けないのか?」
「え、いや・・・・その」

フランに言われると思ってたセリフ
変わりに冗談抜きの表情の教師に言われた
これは、ある意味フランのがマシだったかも
お前を当てた自分が馬鹿だったとでも言いたげな表情
あ、でも俺の思い過ごしだったり・・・しないよなぁ
この問題が解けないのは異常なのか
冷静にそう考えてるのはきっと負け犬精神
解けるはずが無いと最初から思ってるから
今更驚いたりなんてしない。
それでもやっぱり、

「ミーも沢田ですけどー」

さっきまで寝ていたはずのフランが
自分が指名された問題を何食わぬ顔で回答したのは、やっぱり。
腐った負け犬根性は解るフランに嫉妬する

(ダメツナとは大違いだと笑った教師は嬉しそう)

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