Madness

□ぎわく
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「はい!これで全部だね」
「えっと・・・ありがとうっ」

いそいそと拾ったノートを抱えて女の子は走り出した。

「えっ!あ、行っちゃった」

危なっかしい足取りで何度か人とぶつかりながら廊下の奥へと消えていった
私も本来の目的である保健室へ向かおうと立ちあっがった
でも正直、あの娘の笑顔を見たときに気持ちがスッと楽になって・・・
今はあの場所・・・教室に居たときより気分が良かった
もう一度あの空間に戻れるか?と聞かれたら即答しよう。
「 絶 対 嫌 だ 」

進路を教室に向きかけたのを、もう一度保健室へと変える
でも、足元に当たった生徒手帳によって、私は3回目の進路変更をした
<クローム 髑髏>ってだれだろう?



吃驚した。
まさか人に見つかるとは思わなかったから
だって私はあの時、幻術で姿を隠していたんだから

あの人にボスの様子を見て来るように、と頼まれた
それはどうしてか分からない。
私に分かることはいつも、ボスが傷だらけだってこと
いつも皆に優しいボス。皆に慕われていたボス。皆の中心に居たボス。
でも今のボスたちはどうしてあんな風なのか分からない。
あんなに仲が良かったのに
ただのケンカじゃなくて暴力
殴られるのは痛くて冷たい。
だけど叩かれたところはひりひりして熱いこの矛盾
私は何も知らないし教えてくれない
骸様は、知ってて私にボスを見に行かせるの?

抱えていたノートをきゅっと抱きしめた
じわりとにじみ出た涙を誰にも見られないように俯きながら歩く
視界に写るのは床に広がる動く黒い影。
パッと顔を上げれば壁にもたれ掛かっている少年が佇んでいた

「・・・骸様っ」
「おや、クローム」

クロームと同じ特徴ある髪形をした彼は、彼女の絶対的な存在である六道骸だった。
整った顔だけを向けて背中はまだ壁に預けたまま

「沢田綱吉はどうでしたか?」
「ボスは、今日もボロボロ・・・」
「そうですか」

怪しげに口元を緩めた骸は、今この状況を楽しんでいる顔だ
そんな様子に違和感を感じると同時に初めて苛立ちを覚えた

「骸様は、ボスに何かあったのか・・・知ってる、の?」

「いいえ。僕は何も知りませんよ」
嘘だ。骸様に分からないことがあるはずが無い
精神世界に入り込んで、誰かの心を読み下すくせに

「だからこうしてクロームに見てもらってるんじゃないですか」
嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

全部嘘、だって目の前に居る骸様は
絶対骸様じゃないから

(ボスは超直感があるけど、人には第六感があるから)

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