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□傷だらけの君
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本当はツナが強いのは知ってる。
でもツナは優しいから暴力を使わない。
だからツナは毎日ボロボロにやられちゃう。
優しいツナを見るのはスキだけど、傷を増やすツナを見るのはキライ。
痛々しい傷痕は私の心も痛くなって締め付けられるから
それでも笑ってる彼の笑顔は何も出来ない私に空虚感を生み出す

いつまでこんな彼方を見なくちゃいけないの?

今日もツナに向けて罵る言葉を投げつける連中が居る
毎日毎日毎日似たようなことをぶつけてくる
本当の彼を知らないくせに・・・
気づいたら口が勝手に動いて言葉を発していた
気持ちがあふれかえって止まらなくなった。
─否、止める気すら無かったのかもしれない
全て言いたいことを言い終わった後は気持ちがスッと楽になった
けれど、啖呵を切った私の周りには上級生が集まっていた

私は何も悪くない!
馬鹿にするあいつらが悪いんだから

指の関節を鳴らしながらニタリと気持ちの悪い笑みを浮かべて一人の先輩が近づいてくる
筋肉と脂肪の入り混じったその体。
ダイエットしたほうがいいんじゃない?なんて、心の中で悪態をついてみる
大きく振り上げられた拳が私に向かっておりてくる
その瞬間私を呼ぶ声がする、ツナの。

その後のことは良く覚えていない
数箇所からだが痛むのだから多少殴られたみたい
無我夢中で校舎中を走り回った。
私の手を握るのはすこしだけ汗ばんだツナの手
ゆっくりとスピードを落としたツナの背中は震えている

「なんで、あんな無茶なことしたんだよ!!」
「っ!だって、先輩たちが・・・ツナのこと、悪く言うんだもん!!」
「だってじゃないだろッ!?」

背中越しでも伝わる気持ちは不安、恐怖、心配、怒り、負の感情
そして、無事だったという大きな安心
私の瞳からはボロボロと涙が零れだす

「ごめっ、なさ・・・いっ」
「えぇ!?いや、オ、俺も・・・言い過ぎて・・ごっごめん!!!」

あたふたしながら謝る彼がひどく面白くて、泣きながら笑った
しばらく眉を寄せていたツナも緊張の糸を切って一緒に笑った
思いっきり笑った後は、多分ツナのお説教が待ってるんだろうなぁ

(これだけ心配してくれるのは、愛されてるからだよね?)
(これだけむきになってくれるのは、愛されてるからだよね?)

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